人間の脳内には様々なホルモンが存在します。
そしてホルモンは心身に多大な影響、作用を与えています。
通常は自律神経等によってホルモンは一定のバランスを保っているのですが、何らかの原因によってバランスが崩れてしまうと身体にとって様々な悪影響を及ばします。
特に脳内にあるホルモンは少しでもバランスが崩れてしまうと、心身に異常をきたして日常生活に多大な障害をもたらします。
このような状態に陥ってしまった場合、西洋医学では「薬物治療」がメインに行われて脳内のホルモンを補うことをしていきます。
では東洋(鍼灸)医学では、脳内のホルモンを補うことはできなないのでしょうか。
実は最近の研究によって、鍼治療を行うと脳内のホルモンに影響があることがわかってきました。
では具体的にどのようなホルモンが関係して、実際に心身にとってどのような影響を及ぼすのか説明していきたいと思います。
はじめに伝えておきたいのは、鍼治療の研究によって様々なホルモンが生成されていることはわかっており、論文も多数存在しています。
しかしいずれもメタアナリティクスのような確実性が高い論文ではないようで。
信憑性の面では、西洋医学の研究にはまだまだ及ばない気がします。
ですが鍼の研究自体は、東京大学をはじめ様々な病院等で行われているので、いずれ確実性の高い論文が発表されることを期待しています。
さて、鍼治療によって生成されるホルモンですが、以下のホルモンが生成されることがわかっています。
精神の安定、安心感に関連する。
自律神経を安静させる。
睡眠を良い状態にする。
集中力を高める。
幸福感を与える。
前向き(意欲的)になって頑張ることができる。
痛みを抑える。
ストレスに強くなる。
意欲やモチベーションを高くする。
血管を収縮させて血圧を上昇させる。
不安、恐怖心を下げて安心感を与える。
血管を拡張させて血圧を下げる。
痛みを緩和する。
食欲を抑える。
陣痛を促進する。
細かい部分では他にもあると思われますが、代表的なものを挙げました。
上記に挙げたホルモンは心身にとって様々な影響を与えるホルモンですが、いずれも鍼灸治療を行うことによって放出量が増えると考えられています。
そしてこれらのホルモン量が増えることによって、様々な疾患に良い影響を与えて症状の改善に繋がるのです。
では実際に、どのような疾患に対して有効なのでしょか。
ここでは主に鍼灸での対応が多い疾患を挙げてみます。
腰痛、神経痛等、要するに「痛みがある疾患」です。
まず「痛み」とは「脳」で感じる感覚です。
要するに脳が「痛い」と感じれば痛いわけです。
ここで重要なのは、脳の機能(ホルモン)になります。
先ほど挙げた脳内ホルモンが異常を起こした場合、「痛み」を強く感じることがあります。
このような状態になると痛みを通常よりも強く感じてしまうのです。
ですので鍼灸治療を行うことによってエンドルフィン、オキシトシン等が増えれば、個人差はありますが痛みを制御することが出来ます。
上記に挙げたホルモン、主に「セロトニン」「ノルアドレナリン」等が低下すると「うつ状態」「疲労」等の精神面での疾患に罹患しやすいと言われています。
ですので鍼灸治療を行うことによってこれらのホルモンが整えば、精神的な疾患も改善に繋がると思います。
その他にも様々な疾患に対して鍼灸治療を行うことによって、脳内ホルモンが整えば改善に繋がる場合も多々あると思います。
しかしここで重要なのは、「鍼灸治療の限界」も当然あるということです。
これに関してはあくまでも私個人の意見になるのですが、解説してみたいと思います。
脳内のホルモンを調節する場合、西洋医学では「薬物」が中心になります。
西洋医学に関しては、当然「エビデンス」がしっかりとしていますので、薬を服用・注射すれば確実にホルモンは増えるわけです。
主なものでは「抗うつ薬」「抗不安薬」「睡眠薬」等があります。
これらは脳に直接作用して、脳内のホルモンを増やしたり調節したりする薬物です。
そしてこれらの薬物による作用は、鍼灸による作用より高い効果を発揮します。
例えば「セロトニン」ですが、鍼灸治療をするとセロトニンの量が増えると言われますが、抗うつ薬でのセロトニンの量に比べれば少ないと思います。
もちろん両方を比べた研究は無いと思いますが、流石に薬物での作用の方が鍼灸での作用に比べれば高いと思います。
その他、ノルアドレナリン、オキシトシン、ドーパミン等のホルモンに関しても、薬物の方が作用が高いと思います。
このように説明すると「鍼灸治療しないで薬物一択だ」と思うかもしれませんが、実はそうでもないのです。
簡単に説明してみましょう。
脳内ホルモンに関して、鍼灸より薬物の方が効果(作用)が高いと説明しました。
しかし薬物の場合、どうしても「副作用」の問題があるのです。
また副作用以外にも薬物によっては「依存」の問題もあります。
もちろん薬の種類、患者さんの体質によって違いはありますが、作用の高い薬になるとその反面、副作用・依存性も強くなります。
特に脳に直接作用する薬に関しては、作用が高い分どうしても副作用・依存の問題がでてきます。
一方、鍼灸治療に関しては薬物ほど作用は高くないのですが、その分副作用・依存性がほとんどありません。
人によっては「好転反応」がでる場合もありますが、いずれも薬物のような副作用はでません。
ですので薬物の副作用が心配な人は鍼灸治療から試してみてもよいと思います。
当院では主に「痛み」を抱えた方が多く来院されます。
そのほとんどの方が当院での「鍼灸治療」で痛みが改善します。
そもそも鍼灸で痛みが改善するのはどうしてでしょうか。
これに関しては様々な作用があって改善すると言われています。
当院での施術に関してですが、まず痛みの原因とされる筋肉に鍼をするとそこの部分の筋肉に軽度な「傷」ができます。
傷ができると生体反応で傷を治そうと、その部分の血流が改善し結果として老廃物(痛み物質)を流して痛みを改善します。
また筋肉自体が緩むので、硬くなっている筋肉に締め付けられた神経が解放されることにより痛みが緩和します。
その他、鍼灸を行うことによって、脳内の「エンドルフィン」「セロトニン」「オキシトシン」等が増えて、痛みの感覚を低下させます。
このような作用で痛みを改善するのです。
またストレス等が原因の疾患に対しても、鍼灸を行うことによって「セロトニン」「オキシトシン」「ノルアドレナリン」等が増えることによって自律神経が安定します。
ただし、先ほど説明したように薬物の作用に比べると鍼灸での作用は薄いと思います。
ですので例えば痛みに関しえ言えば、通常の痛み、しびれ、こりであれば鍼灸治療で症状を改善することは可能なのですが。
例えば線維筋痛症、末期のガン、内臓損傷、事故の怪我、火傷の怪我等の重度な痛みであれば、薬物の方が優れていると思います。
またストレス性の疾患でも、軽度の自律神経失調症、疲労感、うつ状態等であれば鍼灸で改善が期待できると思いますが。
慢性疲労性症候群、中度~重度のうつ病・パニック障害等は薬物の方が優れていると思います。
これらを踏まえますと、軽度のホルモンバランスからの症状であれば鍼灸治療がお役にたてると思います。
しかし重度になればなるほど、薬物治療が必要になってきます。
では因みに、薬物と鍼灸を併用した場合はどうでしょうか。
実は私が勧めるのは、薬物と鍼灸の併用治療です。
薬物は作用が強い分、副作用がある。
鍼灸は薬物程作用は強くありませんが、副作用の心配はありません。
ですので「併用治療」した方が良い結果が期待できる確率がグンと上がるのです。
これは私の臨床経験的にも確かで、重度の方が薬物、鍼灸の両方をしていると明らかに薬の量が少なくても大丈夫になってきます。
もちろん個人差はあり、症状によって薬の量も減らせないこともありますが。
私見になりますが、薬物、鍼灸治療を併用すると、脳内ホルモンがとても良い状態になっていき、結果として薬物を減らしても問題ないように調節されていくと思います。
以上、脳内ホルモンに対する鍼灸治療の効果を解説してみました。
脳内ホルモンが関係している疾患でお悩みの方は、程度の問題はありますが鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか。
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