脊柱管狭窄症という病名はほとんどの方が聞いたことがあると思います。
テレビ、雑誌等で盛んに宣伝、掲載されていますよね。
日本整形外科学会の調べでは、脊柱管狭窄症を発症している人は350万人もいるそうです。
年齢別では、60代では20人に1人、70代では10人に1人だそうです。
また生まれつき「脊柱管」が細い人がいて、この場合は20代~40代の若い年齢でも疾患を発症する場合もあります。
この脊柱管狭窄症ですが、年々患者数が増えているようで、その背景には「高齢化」が進んでいることが原因の一つとして考えられているようです。
では具体的に脊柱管狭窄症を発症すると、体はどのような状態になるのでしょうか。
腰部の脊柱管狭窄症で簡単に説明してみます。
腰椎の内部を縦に走っている「脊柱管」というトンネルが様々な原因によって狭くなってしまう疾患です。
脊柱管の中には重要な神経(中枢神経)が走っていてますが、脊柱管が狭くなってしまうと神経、血管を過度に圧迫してしまいます。
圧迫された神経、血管は様々な症状を発症します。
一般的には「しびれ」「痛み」を訴えることがほとんどで、特に臀部~足にかけて激しい痛みを訴える場合がほとんどです。
また症状が悪化すると「馬尾神経」という神経を圧迫する場合もあります。
馬尾神経が圧迫されてしまうと「尿失禁」等を発症します。
要するに脊柱管狭窄症とは、脊柱管が物理的に狭くなってしまい、神経、血管を物理的に圧迫してしまうという「器質的疾患」になります。
では脊柱管狭窄症になってしまう原因は何があるのでしょうか。
いくつかありますので代表的なものを説明します・・・
椎体という骨が老化等によって骨棘(トゲ)が出来てしまうことがあります。
この骨棘が付近の神経を圧迫してしまいます。
椎体間にある「椎間板」という軟部組織が様々な原因によって潰れることがあります。
潰れた椎間板は膨らむので、結果として脊柱管内の神経、血管を圧迫してしまいます。
椎体には「後縦靭帯」「黄色靭帯」という靭帯がくっついています。
これらの靭帯が何らかの原因によって厚くなってしまうことがあり、結果として神経、血管を圧迫してしまいます。
椎体が様々な原因によって分離してしまうことがあります。
分離した椎体は不安定な状態になりますが、その状態で椎体がすべって(ずれて)しまうことがあります。
椎体がすべることによって、中の神経、血管が圧迫を受けてしまいます。
脊椎が左右に曲がったり、ねじれたりすることにより脊柱管が狭くなってしまい、神経、血管を圧迫します。
一般的に脊柱管の狭窄は、このような原因で発症する場合がほとんどです。
いずれにしろ上記の原因は「器質的」なものであり「機能的」なものではありません。
これは何を意味するのかと言いますと。
脊柱管狭窄症は「MRI」等の検査を行えば確実に判断できるということです。
では脊柱管狭窄症を発症した場合、どのような症状で苦しむのでしょうか。
初期段階では「腰痛」「つまずきやすくなる」「足が重だるい」「足の裏の違和感」等がありますが、中期~後期になると「腰~足がしびれる」といった症状を発症します。
これを「間欠性跛行」と言います。
脊柱管狭窄症の60%~80%がこの間欠性跛行を発症すると言われています。
それほど間欠性跛行でや悩む人はたくさんいるということです。
この間欠性跛行ですが、具体的な症状は・・・。
しゃがんだり前かがみの姿勢で休むと、痛み、しびれが何故軽減するのか言うと、背中を丸めることで脊柱管が広がって神経の圧迫が緩むからです。
尚、歩行の距離ですが個人差があります。
軽度では数十分は歩行できるようですが、重度になると5メートルほど歩くと痛み、しびれが発症して歩行できなくなるようです。
実は脊柱管狭窄症の方のほとんどは、狭窄自体で悩む方はほとんどいません。
実際には間欠性跛行で悩まれている場合がほとんどです。
ですので脊柱管狭窄症で来院される方のほとんどは「足のしびれ、痛みをなんとかしてください」といって来院されます。
脊柱管狭窄症の治療ですが、大きく分けて「保存療法」「手術」2パターンに分かれます。
麻酔薬を注射する「神経ブロック」、鎮痛薬、血行改善薬等の内服、リハビリテーション、コルセット等があります。
いずれも狭窄自体を治す治療ではなく対処療法になります。
軽度から中程度の場合は、保存療法が治療のメインになります。
症状が重度の場合は手術が検討されます。
手術に関しては、脊柱管内を圧迫している組織を取り除く「除圧術」、脊柱管を広げた状態でボルトで固定する「除圧固定術」があります。
最近では「内視鏡」を使って、体の負担を最小限に抑える術式も行われているようです。
病院等の医療機関では、これらの治療が行われます。
ただし、保存療法は対処療法になりますので完治はしません。
手術に関しても、必ず症状が良くなるわけでなく、場合によっては「後遺症」が出る場合もあります。
ですのでよほど症状が悪化している状態でない限り、手術は行われないようです。
では脊柱管狭窄症に対して、鍼治療は有効な施術法になるのでしょうか。
まず脊柱管狭窄症は脊柱管が物理的に狭くなっている「器質性疾患」です。
鍼治療で物理的な狭窄を治すことはできないので、脊柱管狭窄症を直接治すことはできません。
では有効ではないのかというと、そんなこともありません。
脊柱管狭窄症で来院される方のほとんどは間欠性跛行を改善したくて来院される方がほとんどです。
要するに間欠性跛行を少しでも改善してほしくて鍼灸院に来院されます。
そして鍼治療で間欠性跛行を改善することは十分可能です。
ただし経験上、すべての人に有効というわけではありません。
改善しない人もいるのは確かです。
また100%改善できるかと言えば、それも難しいのです。
ですので当院では「100%は無理だと思いますが、50%の改善を目指しましょう」と伝えいています。
要するに「今の痛み、しびれを10だとすると、それを鍼治療で5くらいに減らしましょう」と言うことです。
「たった半分」と思われるかもしれませんが、痛み、しびれが半分になっただけでも生活の質はかなり高くなるのです。
それだけ間欠性跛行を改善するのは難しいのです。
もちろん鍼灸院によって考え方、改善率は違ってくると思います。
あくまでも当院ではこのような考え方で施術を行っています。
脊柱管狭窄症は、今現在でも難しい疾患です。
完全に治すのは無理だといっても過言ではありません。
もちろん人によっては手術が上手くいって、ほぼ完治の状態になる場合もあります。
しかし私が今まで診ている狭窄症の方達で完治まで至った人は少ないです。
保存療法で何とか生活している人、手術したがほとんど症状に変化が無かった人、様々です。
当院のような鍼灸院には脊柱管狭窄症が原因の間欠性跛行で来院される方がほとんどです。
いずれも「足のしびれ、痛みを何とかしてください」といって来院されます。
そのような方には上記で説明したように「とりあえずしびれ、痛みを半分に減らすことを目標として頑張りましょう」と説明しています。
施術法ですが、腰、臀部、下腿に鍼治療をしていきます。
特に「陰部神経刺鍼」といって臀部から長い鍼を使用して施術を行っていきます。
また狭窄部の椎体周囲にもしっかりと鍼をしていきます。
陰部神経刺鍼を行うことにより陰部神経の興奮が治まったり、椎体周囲の血流の改善が期待できます。
個人差はありますが、上手くいけば症状が半分ほど減ります。
この状態になれば、例えば400メートル程度の歩行で、しびれ、痛みを発症していた方が、1キロ程までは歩けるようになったりします。
ただし先ほど説明したように、すべての方がこのような状態にまで改善するわけではありません。
数回施術を行ってもほとんど変化のない場合もあります。
比較的筋肉がしっかりしていて、若い方は改善率が高く、筋肉が少なく年配の方は改善率が悪いと経験的に思います。
ただし鍼治療は薬物のような副作用が無いので安心です。
興味のある方は数回程、鍼治療をお試しください。
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