ほとんどの方は「五十肩」という言葉をご存じだと思います。
五十肩のイメージとしては「40代、50代」「肩が上がらない」「肩の激痛」等、様々だと思います。
まず「五十肩」という言葉は正式な病名ではありません。
正式には「肩関節周囲炎」と言います。
またこの疾患は、明らかな原因がいまだにわかっていません。
ですので五十肩になった場合、なぜ五十肩になったのかははっきりいってわからないのです。
一生、五十肩を経験しない人もいれば、右が五十肩になったと思ったら三年後に左も五十肩になってしまう人もいます。
要するに個人差がとても激しい疾患であるとも言えますね。
この五十肩(肩関節周囲炎)ですが、発症の原因は様々だと言われています。
そしてその原因によって重症度が違ってきます。
当院のような「鍼灸院」には、五十肩で来院される方はとても多いです。
ですがはやり同じ五十肩でも、鍼灸治療で改善しやすい五十肩、改善しずらい五十肩があります。
このページでは、あくまでも私の経験ですが「改善しやすい五十肩」「改善しずらい五十肩」を解説してみたいと思います。
まずは「改善しやすい五十肩」を説明してみます。
特に当院のような鍼治療を行っている場合で説明します。
鍼治療で改善しやすい五十肩は「筋肉が原因の五十肩」です。
要するに、肩関節周囲の筋肉が拘縮(ものすごく硬くなっている状態)している場合の五十肩は鍼治療で改善する確率がとても高くなります。
ここで言う筋肉は主に、「肩甲下筋」「三角筋」「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」等があります。
これらの筋肉が拘縮すると、肩の関節の可動域が低下してしまうので結果として腕が上がらなくなってしまいます。
鍼治療は、これらの筋肉に直接アプローチができる施術法です。
鍼で直接これらの筋肉にアプローチすれば、筋肉内の血行を改善して中にある老廃物を速やかに流していきます。
これらを数回行っていくことにより、筋肉の拘縮は徐々に改善していきます。
筋肉の拘縮が改善していけば、関節の可動域も広がっていくので結果として腕が上がっていきます。
では鍼灸治療では治りずらい五十肩とはどのようなものがあるのでしょうか。
それは「滑液包が関節に癒着している五十肩」です。
まず「滑液包」とは何なのか説明します。
肩の関節内には、簡単に言ってしまうと関節(腱板)を保護する袋状の組織があります。
この袋を「肩峰下滑液包」と言います。
この袋がクッションのような役割をしたり、関節をスムーズに動かす潤滑剤のような役目をしています。
しかし何かしらの原因によって、この袋が炎症を引き起こしてしまうことがあります。
そして炎症を引き起こした袋は、肩の関節部にべったりと癒着してしまいます。
この状態になると、肩の関節は可動域を失ってしまうのです。
このような状態を「凍結肩」と言ったりします。
凍結肩は筋肉が原因の症状と比べると、とても重い症状になります。
まずほとんどといっていいほど腕が上がりません。
酷い場合は、まったくといっていいほど腕が上がらなくなります。
このように関節包が癒着してしまった場合は、鍼治療をしてもほとんど改善はみこめません。
鍼を関節の深部にまで刺して関節包にアプローチしたとしても、関節包は筋肉とは全く違った組織です。
筋肉のように新陳代謝が良くなることはないと思います。
ですので関節包の癒着が原因での五十肩に関しては、当院では難しいと説明しています。
五十肩に関して、当院での鍼灸治療の適応・不適応を説明しました。
症状の違いとしては、まず「筋肉の拘縮が原因」の五十肩では、ほとんどの人がある程度腕は上がります。
場合によっては痛いながらも上まで腕が上がる場合もあるのです。
それに対して「関節包の癒着が原因」の五十肩では、まったくといっていいほど腕があがりません。
またこれに似たような五十肩で「石灰の沈着」があります。
これはカルシウムの塊が肩の関節にくっついてしまう症状で、この疾患も腕がほとんど上がらなくなります。
私個人の意見を言えば、関節包の癒着や石灰の沈着は外科手術を受けた方が速やかに治ります。
また筋肉が原因の五十肩に関しては、放っておいても一年~二年程で自然に治癒しますが、鍼治療をした方が早く治ります。
尚、五十肩は「急性期」「慢性期」「回復期」といった経過を辿ります。
急性期に関しては、炎症が激しいのでこの時期に下手に鍼で刺激すると逆に痛みが悪化する場合もあります(もちろん大丈夫な場合がほとんどですが)。
ですので急性期に関しては、炎症を抑える意味で「鎮痛薬」「解熱剤」を服用した方が有効な場合もあります。
慢性期に移行したら、しっかりと鍼治療を受けるとよいと思います。
しっかりと鍼治療を受ければ個人差はありますが、数回の施術で腕が上がるようになりますよ。
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