10代の頃から、生理痛が酷い。
痛み自体が強烈で、痛み発作が起きると何もできなくて横になって寝ることしかできない状態だった。
発作が起きる直前に鎮痛剤を服用すると、多少はマシになる。
20代になって社会人になると症状はもっと酷くなり、下腹部の痛みに加え、腰痛、頭痛も発症するようになる。
婦人科で検査すると、器質的な問題は全くなく、機能的な月経困難症と診断された。
ホルモン療法を勧められたが、受ける気がせず鎮痛剤の服用で様子をみることにした。
しかし最近になって鎮痛剤の効きが悪くなっていて、発症前に服用しても前ほど痛みが和らがない。
薬物以外で何かないかと探して「漢方薬」を服用することにしたが、いまいち効果を感じない。
他の施術を探すと色々と出てきたが、なかでも鍼灸治療に興味を感じるようになった。
自宅の近くをネットで検索すると、当院のホームページを見つけて良さそうだったので試しに来院された。
痛みの性状を聞くと、下腹部が差し込むように痛む。
同時に腰が痛くなり、頭痛も併発することが多い。
社会人になってストレスが増えたので、症状も悪化していると感じる。
仕事は事務作業で、座っていることがほとんど。
体を動かすのはあまり好きでなく、運動の習慣は全くない。
10代のころから片頭痛持ちで、市販の鎮痛剤を服用する量は多く、あきらかに容量を超えているのは自分でも分かっている。
最近はパソコンの使い過ぎで、首、肩のこりも酷く、緊張性の頭痛も併発している。
触診では、体の緊張が激しい。
下腹部の冷えもある。
脈診すると「弱」「軟」である。
症状はいわゆる月経困難症である。
病院で器質的な疾患は除外されている。
これらを考慮すると、機能性の月経困難症と推察される。
仰臥位で、頭、手、足、腹部のツボに鍼治療(腹部には同時に灸をする)。
伏臥位で首、肩、腰、腰(下部)に鍼治療。
温灸器を腰全体にあてる。
前回の施術で、体が軽くなった感じがする。
施術は前回同様。
首、肩のこりは楽になっている。
下腹部の冷えも感じなくなっている。
施術は前回同様。
月経時の痛みは楽だった(痛み指数10→5)。
施術は前回同様。
施術の頻度を週に一回のペースに変更する。
明らかに片頭痛の頻度が楽になっている。
首、肩のこりも楽。
施術は前回同様。
片頭痛は今のところ発症していない。
鎮痛剤を服用する回数も減っている。
首、肩、腰の痛みは無い。
施術は前回同様。
施術の頻度を二週に一回のペースに変更する。
月経痛は明らかに楽だった(痛み指数5→2)。
施術は前回同様。
今回の症例は典型的な「月経困難症」です。
月経困難症は大きく分けて「器質性」と「機能性」に分けられます。
器質性とは、子宮内膜症、子宮筋腫等といった直接的な病気が存在するケースです。
機能性は、器質性のような直接的な病気は存在せず、原因が不明なケースです。
鍼灸治療で効果があるのは「機能性」の月経困難症です。
機能性に関しては原因不明とされてはいますが、実際にはホルモンのアンバランス、ストレス、体質なんかが複雑に絡み合って発症していると思います。
病院では「ホルモン」での治療がありますが、ホルモン治療は様々な副作用が指摘されていて、抵抗がある人が多いようです。
その場合、西洋医学以外での施術を模索する人が多いのですが、「漢方薬」を服用する人も多いと思います。
漢方に関しては、その人の体質に合えば効果は期待できると思いますが、合わないとあまり効果は期待できないようです。
鍼灸に関しては個人差はありますが、しっかりと施術していけばとても効果的だと思います。
因みに鍼灸院によって、施術の方法、考え方は様々で統一性はありません。
当院では、自律神経のバランスを整える、体の緊張を緩めることを主に施術しています。
まず月経困難症の方のほとんどは、自律神経のバランスが崩れています。
これはストレスの多い生活、ストレスに弱い体質の方が圧倒的にこの疾患に悩まされていることが多いからです。
自律神経はストレスによって容易にバランスを崩します。
バランスが崩れた自律神経は、体の様々な部分で不具合を起こします。
そのなかのひとつに「月経時の体調の変化」があるのです。
例えば月経痛(生理痛)は、「プロスタグランジン」等のホルモンが過剰に分泌されてしまいますが、これは自律神経のバランスが悪いと著明に起きます。
なので自律神経のバランスが整えば、これらのホルモンも安定すると思います。
また筋肉の緊張も月経困難症の方によくみられます。
これは月経困難症の方は、神経質、几帳面な性格で、脳のストレスを感じやすいと言えます。
また体質的に「冷え性」の場合が多く、特に月経困難症の方は「下腹部(内臓)の冷え」が著明です。
従って脳のストレス(緊張)、冷え性が重なると、筋肉は過緊張状態になり硬くなるのです。
ですので当院では鍼や灸、温灸器等を使用してしっかりと上記の症状に対処しています。
尚、施術の頻度ですが、月経困難症に関しては「予防」的な施術がよいと思います。
要するに痛みを発症してしまった時に施術するのではなくて、症状が無い時にも施術を行うのです。
例えば、週に二回とか一回程のペースで施術を行えば、自律神経や体の緊張が取れていき、実際に月経時になった場合、症状が軽くて済みます。
※逆に痛みを発症した時は、鎮痛剤等の薬物の方が効果があります。
要するにこの疾患に関しては、西洋・東洋医学の両面で施術をした方が良いと言うことです。
機能性の月経困難症でお悩みの方は、鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか。
個人差はあると思いますが、ほとんどの方が症状の改善を認めています。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。