二週間前から、左の耳がつまった感じがある。
前にも同じような症状は多々あったが、数日で勝手に治っていた。
しかし今回は治る気配が無く、病院に行って耳の検査をしたがこれといった異常は無かった。
一応、利尿剤とビタミン剤を処方されて服用しているが、あまり効果を感じない。
ネットでいろいろと調べていると、鍼治療が良さそうと思い職場近くの鍼灸院を検索すると当院を見つけた。
ホームページを見てみると、耳のことに関して詳しく載っていたので試しに行ってみようと思い来院された。
耳の症状について詳しくお聞きすると、耳の奥に何か水のようなものが入っている感じがするとのこと。
なので常に違和感があって気分が良くない。
聞こえに関しては問題なく、病院の聴力検査でも正常だった。
痛み、しびれ等の症状は無い。
仕事はパソコン業務で、身体はほとんど動かさない。
私生活では、子供の進学問題、親の介護等、相当なストレスを抱えている。
睡眠は浅く、夜中に何回も起きてしまう。
耳以外では、首肩の筋肉のこりが酷く、定期的にマッサージには通っている。
大きく「あくび」をすると、多少耳のつまり感は楽になる。
身体診察では、首、肩、背部の筋肉の緊張が激しい。
左の顎関節周囲の筋肉の過緊張が認められる。
側頭部の筋肉の緊張も酷い。
左の顎関節周囲の筋肉の過緊張がある。
あくびをすると耳のつまり感が楽になる。
ストレス過多、睡眠が浅い。
これらを総合すると、左顎関節周囲の筋肉の過緊張による内耳の血流障害が原因の耳閉感と推察される。
うつ伏せで、首、肩、背部の筋肉に鍼治療。
左上の側臥位で、顎関節周囲、側頭部の筋肉に鍼治療。
温熱マッサージを顎関節周囲にかける。
全体的に身体は軽くなった感じ。
耳のつまりは変化なし。
施術は前回同様。
耳のつまりは少し楽。
睡眠も深くなった。
身体全体はだいぶ楽になっている。
施術は前回同様。
耳のつまりはだいぶ楽。
首、肩のこりも楽になっている。
施術は前回同様。
耳のつまりは無くなった。
首、肩のこりもほぼ無い。
睡眠も深く眠れる。
今回の症例は、左顎関節周囲の筋肉が過緊張を引き起こすことによって、内耳の血流が悪くなり、結果として耳のつまり感を引き起こしたと思います。
内耳の血流障害については様々な原因があるのですが、顎関節周囲の筋肉の過緊張が原因の場合は多いようです。
そして顎関節周囲の筋肉が硬くなる原因も様々だと思いますが、今回のケースに関しては「食いしばり」が原因だと思っています。
食いしばりとは、要するに睡眠中に無意識に強い力で食いしばっている動作です。
食いしばりの原因は所説あるのですが「過度のストレス」が原因の場合が多いようです。
今回のケースの方も、子供の進学問題、親の介護問題等、過度のストレスを抱えていて、それが原因で睡眠時に食いしばりがあったのではと思います。
食いしばりや歯ぎしり等が続くと、顎関節周囲の筋肉は過緊張を引き起こしますので、触診すれば容易にわかります。
また同時に「側頭筋」「胸鎖乳突筋」の筋肉も硬くなるので、これらの触診も重要になります。
そして首、肩、背部(特に脊柱起立筋)の筋肉の緊張も酷くなっている場合が多いです。
当院では、このような症状の場合は鍼治療でしっかりと筋肉の緊張を緩めていきます。
特に顎関節周囲の筋肉に対しては、鍼でしっかりと緩めます。
顎関節周囲の筋肉が緩むことによって、内耳の血流が改善すれば個人差はありますが、ほとんどの方が耳のつまり感(違和感)の症状が無くなります。
それだけ顎関節と内耳には深い関係があると言えるのです。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。