ほとんどの方は「パニック障害」という言葉を聞いたことがあると思います。
よく「有名人」等が、「パニック障害を発症、しばらく休養します」と発表していますよね。
書店に行けば、パニック障害関係の書籍もたくさん見受けられます。
それだけ「パニック障害」という疾患で悩まれている方は多いと思われます。
突発的に起きる発作が特徴です。
「動悸」「不安感」「呼吸困難」「吐き気」「ふるえ」「胸痛」等が主な症状になります。
症状の程度には個人差はありますが、いずれも症状が重くなります。
特に酷い場合は「このままでは死んでしまうのではないか」といった思考に陥ってしまい、救急車を呼んでしまう人もいます。
その他にも、「また発作が起きたらどうしよう」という「予期不安」という症状。
発作が起きた場所、助けを求められない狭い空間(満員電車、渋滞の車のなか)等、「広域恐怖」があります。
とにかくパニック障害を発症すると、精神・肉体共に「耐え難い恐怖」を伴うことが特徴です。
尚、パニック発作を経験する人の割合は、9人に1人と言われています。
そのなかで30%~40%の人が発作を繰り返すようになり病的なパニック障害に罹患すると言われます。
性別では女性の方が男性の3倍と言われています。
まだはっきりとした原因はわかっていません。
しかし、いくつかの有力な説はあるようです。
代表的なものを説明します。
肉親との死別、重度の病気、人間関係の劇悪化等、比較的大きなストレスを抱えた場合は発症の原因になると言われています。
パニック障害の履歴がある一親等の血縁者がいる場合は、いない人に比べると、パニック障害になる確率が高いというデータがあります。
何らかの原因によって一度パニック状態になると、人によっては不安を抑える脳の神経回路が狂ってしまい、繰り返しの発作が起きやすくなると言われています。
パニック障害の方を診ていると、ほとんど場合「大きなストレス」が誘因になっていることが圧倒的に多いです。
ストレスに関しては「ストレスに強い」「ストレスに弱い」人がいますが、ストレスに対して「敏感」「引きずる」タイプの人は脳の過敏状態が激しくなってパニック発作を引き起こしやすように思います。
要するに「感受性の高い人」が大きく長期なストレスを抱え込んでしまうと発症率が高くなると思います。
パニック障害に関しては、しっかりとしたエビデンスがある治療法は今のところありません。
つまりすべての治療が「対処療法」になります。
まず西洋医学(医療機関)では、次の治療法が主になります。
「抗不安薬」「抗うつ剤」等を服用して、脳の機能を正常に戻していきます。
だたし効果には個人差があり、薬で効果がでる人もいればあまり変化がない人もいるようです。
苦手な場所等を克服する療法になります。
少しづつ苦手を克服するようにしていき、成功体験を何度も積み重ねていくことにより、脳を正常に戻していきます。
認知行動療法に関しても、効果には個人差があるようです。
いずれも「脳に働きかける」といった治療法になります。
これらを総括すると、西洋医学ではパニック障害を「精神疾患」と定義づけていると思われます。
では当院(鍼灸)では、パニック障害をどのように捉えているのでしょうか・・・。
まず、当院のような鍼灸院には「パニック障害」で来院されている方は一定数います。
そのうち7割位の方は程度の差はありますが、改善することがほとんどです。
残りの3割は、ほとんど変化は無く改善しないようです。
そして改善された方に共通していたことがあります。
それは「首のこり」が酷かったことです。
とにかく、首周囲の筋肉が過緊張を引き起こしていました。
そして首以外にも、「顎周囲の筋肉が過緊張を引き起こしている」ことが多かったのです。
これは何を意味しているのでしょうか。
要するに、パニック障害の原因のひとつとして「首のこり」が深く関わっているのではないかと結論づけたのです。
それを裏付けるように、首周囲、顎周囲の筋肉を鍼でしっかりと緩めると、徐々にではありますが症状が改善していったのです。
このことからも、一定数のパニック障害の方に関しては「首のこり」が原因のひとつだと推察されます。
では何故「首のこり」がパニック障害に関係するのでしょうか。
有力な説を2つ説明してみます。
首の筋肉が過緊張を引き起こすと、脳に血液を送っている血管が細くなってしまいます。
この状態になると、脳への血流量が減ってしまいます。
そして脳の血流が低下することによって、脳機能が低下してしまい結果としてパニック発作を発症しやすくなります。
首は自律神経と深い関わりがあります。
なかでもストレス等で「交感神経」が興奮すると、筋肉内の血管が細くなり結果として筋肉は過緊張を引き起こします。
また自律神経を統括している部分は脳にあるので、自律神経が崩れると脳の機能が低下します。
要するに「自律神経失調症」になるのですが、この状態になると症状のひとつとして「不安感」「動悸」等のパニック発作を発症する確率が高まります。
上記に挙げた原因はまだ「仮説」の段階です。
しかし最近では、脳専門の病院等で「首のこりや自律神経が深く関わっているのではないか」と論じられることが増えているようです。
今後、しっかりとした論文が発表されれば信憑性が更に高まると思います。
では当院では、首のこりが原因と思われるパニック障害の方に対して、どのような施術を行うのか。
以下に具体的法を説明していきます。
首の後ろに位置している筋肉を鍼でしっかりと緩めます。
これらの筋肉をしっかりと緩めることによって、血管の拡張を改善して脳への血流量を増やします。
顎関節周囲の筋肉を鍼でしっかりと緩めることによって、俗にいう「食いしばり」を改善します。
これはパニック障害の方には「食いしばり」を発症している方が多いと思われるからです。
食いしばりはストレスに対する無意識の反応です。
ですので食いしばりで酷使される筋肉を緩めることによって間接的に脳のストレスを減らしていくのです。
背中と交感神経は深く関わっています。
交感神経は体の様々な部分に存在しますが、背中にたくさん密集しています。
ですので背中の筋肉の過緊張を鍼灸で改善することによって、間接的に交感神経の過緊張を改善していきます。
東洋医学的な考えです。
その方の体質に合った「ツボ」を鍼灸で刺激することによって、症状を改善していきます。
当院では主に、頭、手、足のツボを重視して施術しています。
これらのことを重視して施術していくと、個人差はありますが徐々にパニック障害の症状が改善していきます。
尚、使用する「鍼」の種類は患者様の体質によって違います。
パニック障害に罹患する方は年々増えているようです。
先ほど説明したように、パニック障害の原因ははっきりとはわかっていません。
ですので医療機関でも、治療が合えば劇的に良くなる人もいる半面、ほとんど改善がみられない方もいるのが現状です。
そして鍼灸治療でも、同じことが言えます。
今まで何人ものパニック障害の方を診てきましたが、ほとんど症状が無くなった人もいればほとんど症状が改善しなかった人もいます。
それだけパニック障害とは、複雑で個人差が激しい疾患なんだと思います。
因みに当院では、パニック障害を発症した人に対しては、薬物治療との併用をお勧めしています。
施術院によっては「薬はダメ」みたいなことを言っている人もいるようですが、私自身はこの意見には反対です。
特に症状が重く、不安発作を発症すると恐怖で救急車を呼んでしまうような場合は、抗不安薬を服用したほうが良いと思います。
おすすめは病院の治療と併用して鍼灸治療も受けてもらうことです。
何故、そのようのことが言えるのか・・・。
まず、先ほどの「筋肉のこり」が原因になっている場合は、鍼治療の方が効果が期待できると思います。
その一方で「脳の機能障害(ホルモンバランス)」が原因になっている場合は、薬の方が効果的だと思っています。
ですのでパニック障害のような複雑な疾患に関しては、西洋、東洋の両方で治療を受けた方が改善率はグッとあがると思います。
また改善するまでの期間ですが、パニック障害のような疾患は改善するまでのそれなりの時間がかかります。
私の経験では、半年~1年はかかると思います(どんなに早い人でも3か月)。
ですのでパニック障害で苦しまれている方は、治療、生活環境改善等、できることからはじめて少しづつ症状を治していきましょう。
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