女性は妊娠すると、体に様々な変化が起きます。
それに伴って不快な症状も発症していきますが、そのなかで「鍼灸治療が有効」な疾患はたくさんあります。
「妊娠しても鍼灸治療して大丈夫」と不安になる方も多いと思いますが、大丈夫です。
むしろ「妊婦さんと鍼灸は相性が良い」とも言えるのです。
妊娠すると場合によっては「薬」を使用できなりことも多くなってきます。
鍼灸は薬物のような「副作用」がほとんどございませんので、むしろ「妊婦さんには優しい施術」とも言えるのです。
では妊婦さんが鍼灸院に来院される症状は、どのような疾患があるのでしょうか。
以下に詳しく説明していきます。
妊婦さんのほとんどが経験する症状です。
まず、お腹が大きくなってくると腰を反る(後屈姿勢)をとるので腰の筋肉に負担がかかります。
このような状態が続くと、腰の張り、痛みを感じるようになります。
また妊娠すると「リラキシン」というホルモンが増えます。
リラキシンは女性ホルモンのひとつで、靭帯を緩める作用があります。
この作用によって、骨盤を繋げている靭帯も緩み胎児が骨盤内を通りやすくなるのですが、その影響によって靭帯周囲の神経が過敏になって腰の痛みを発症します。
腰痛に関しては個人差はありますが、妊娠中期~後期にかけて症状は悪化していく傾向にあります。
妊婦さんの50%~80%が悪阻(つわり)で苦しむと言われます。
何故、悪阻が起きるのかはっきりとはわかっていないようですが有力な説として。
女性ホルモンが「嘔吐中枢」を刺激する、体内にガスが溜まる。
ビタミン不足、血糖値の変動、精神面での影響等。
症状には個人差がありますが、酷い場合は食事がとれず点滴をされる方もいます。
逆子(骨盤位)とは、胎児の頭が下にない状態を言います。
実は胎児は妊娠中期までは、子宮内で様々に体勢を動かします。
ですが体が徐々に大きくなってくると頭が重くなるので自然と頭が下になります。
しかし何かの要因によって、頭が下にならずに上、横にある場合は逆子となるわけです。
尚、逆子が治らなかった場合、日本ではほとんどが「帝王切開」になるようです。
妊娠中は、出産の不安、体調の変化、環境の変化等でストレスが増えます。
もちろん個人差はありますが、過度のストレスが続くと「自律神経」のバランスが崩れます。
そして自律神経のバランスが崩れてしまうと、自律神経が関係する様々な症状に苦しみます。
自律神経が関係する症状は幾つもありますが、妊婦さんに多い症状としては。
首肩こり、めまい、頭痛、疲労感、イライラ、抑うつ感等があります。
鍼灸治療ですが、実は妊婦さんにとってはとても優しい施術なんです。
まず女性は妊娠すると、胎児のことを考えて使用できる薬に制限があります。
特に腰痛、肩こり等の「痛み」に対しては「鎮痛剤」は効果が薄いものしか使用できません。
その他にも、悪阻、精神的な症状に対しても、西洋医学的な薬はほぼ使用できません。
ですので病院では主に「漢方薬」を使用する場合が多いようです。
一方、鍼灸治療ですが、西洋薬のような副作用はほとんどありません。
ですので基本的には、妊婦さんが抱える症状のほとんどが対象範囲になります。
このことからも鍼灸治療は妊婦さんにとってベストマッチな施術法といえます。
実際に当院では妊婦さんに鍼灸治療を行うに際して「刺激量」にはとても気を使います。
通常、当院では頑固な筋肉のこり、痛みで来院される方が多いので、施術に関しても比較的しっかりとした鍼を使用します。
要するに刺激量は比較的強い施術をすることが多いです。
もちろん患者さんの症状・体質によっては弱い刺激で対応する場合もありますが。
一方、妊婦さんへの施術に関しては「弱い刺激で対応」しています。
何故でしょうか。
ただでさえ妊娠というストレスが影響しているので、体はデリケートな状態です。
このような状態の体は体力が落ちている状態です。
この状態で強い刺激をしてしまうと、母体を傷つけてしまう恐れもありますし、胎児にも悪影響を及ぼしかねません。
要するに妊婦さんに関しては「弱い刺激で十分」といえるのです。
ですので当院では症状・体質に関わらず、妊婦さんには短くて細い鍼を使用して施術を行っています。
また患者さんの症状・体質によっては鍼から低周波のパルスを流すこともあるのですが、妊婦さんには低周波は流しません。
これも刺激過多になってしまうからです。
まとめますと、妊婦さんへの施術に関しては、短くて細い鍼を使用して低周波も流さず弱い刺激で対応します。
弱い刺激でも妊婦さんの施術量としては十分で、効果もしっかりと期待できます。
また鍼以外にも「温灸マッサージ」も併用する場合が多いです。
温灸マッサージはリラックス効果が高く、妊婦さんへの体には最適な施術だと思います。
では妊娠後に鍼灸を受けるとして、いつから鍼灸治療を受ければよいのか悩まれる方も多いと思います。
これに関しては、鍼灸院で意見が分かれるとこなんですが。
当院の考えとしては、「鍼灸治療の経験が無い」「鍼灸治療に対して抵抗がある」ようであれば「安定期」に入ってからの方が良いと思います。
それとは逆に「鍼灸治療は慣れている」「鍼灸治療に対してまったく抵抗が無い」のであれば、初期の段階で受けても大丈夫です。
実際に当院でも妊娠初期から鍼灸治療をしている方は、妊娠する前から当院で鍼灸治療をしている方がほとんどで、要するに「鍼灸に慣れている」場合です。
基本的には妊娠初期でも鍼灸治療は問題ないのですが、「万が一」を考慮して、「安定期になったら鍼灸を受けてください」という鍼灸院も多いと思います。
ですので当院でも、「当院にて鍼灸治療を受けたことが無い人は安定期になったらご来院ください」と説明しています。
個人差はありますが、女性は妊娠すると何かしらの症状で悩むことがほとんどです。
そのなかで、特に腰痛、悪阻、肩こり、お腹の張り、逆子等は鍼灸治療が特異な分野です。
定期的な鍼灸治療によってほとんどの方の症状が改善していきます。
上記で説明したように、当院では「できるだけ優しい施術」を心がけています。
ただでさえ妊婦さんは「妊娠」というストレスに晒されて、肉艇的にも精神的のも不安定な状態になりやすいです。
鍼灸治療は、そんな妊婦さんの肉体的・精神的な辛さを減らす助けになれば幸いです。
尚、妊婦さんの質問で多いのが「お腹に鍼するんですか」とよく聞かれます。
当院では妊婦さんのお腹に鍼や灸をすることはありません(不妊症の施術では、お腹に鍼灸しますが)。
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