
元々腰痛が酷かったが、整体、マッサージ等で凌いでいた。
一年程前に第一子を出産、妊娠時には腰痛に加えて臀部、鼠径部の痛みが激しかった。
出産後はしばらく良かったが、産休後は腰痛に悩まされるようになる。
また左の臀部、鼠径部に加えて下肢の痛み・しびれも発症する。
病院で腰のレントゲンを撮ったが異常は発見されず、大学病院でMRIを撮ったが異常は無かった。
今現在は、痛み止めを処方されて服用すると多少痛みは治まる。
整体も定期的に通っているが徐々に良くなっている感じはある。
ネットでいろいろと探したところ、鍼治療も良いと知り、経験が無いので怖かったが職場や自宅にも比較的近かった当院に来院された。
仕事はOA業務で、一日中座っている。
今現在の痛みは腰に加えて、左臀部、左鼠径部、左下肢に痛みがある。
特に朝起きる時が一番痛く、動いていると徐々に治まるが、仕事で座っていると痛みが酷くなってくる。
尚、痛みの性状は激痛まではいかず、鈍痛・しびれ感である。
痛い部分をご自身の指で示してもらうと、左の上後腸骨棘という場所を押さえる。
仰向けの状態で左の膝を立てて右に倒すと腰の下部に痛みを感じる。
腰痛に加えて臀部、鼠径部、大腿部に鈍痛、しびれがある。
レントゲン、MRIでは器質的な異常は発見されない。
動かし初め、長時間の座位で痛みが強い。
しばらく動かしていると痛みは軽くなる。
痛い部分を指で示してもらうと上後腸骨棘を示す。
これらを総合すると「左の仙腸関節障害」と推察される。
うつ伏せで、腰、臀部の硬くなっている筋肉に鍼治療。
左上の横向きで、左仙腸関節、臀部、鼠径部、大腿部に鍼治療。
左仙腸関節に温灸を加える。
朝起きた時の痛みは多少楽になっている。
痛み指数10→8
施術は前回同様。
全体的には楽。
仕事で長時間座っていると痛みが辛くなる。
痛み指数8→5
だいぶ楽になっている。
治療は仙腸関節部にいつもより長い鍼を使って深めに刺す。
痛み指数5→3
ほぼ痛みは気にならない。
施術は前回同様。
痛み指数は2。
だいぶ楽になったので、一旦施術を終了とした。
ただ仕事、子育てをしているとまた辛くなってくるので、痛みが出始めたら早めに来院してくださいと伝えた。
今回のケースははおそらく「仙腸関節痛」であると思われます。
仙腸関節痛はあまり聞きなれない言葉だと思いますが、近年では腰痛のかなりの割合をこの仙腸関節が占めているのではないかと言われています。
まず仙腸関節は何かと言うと、骨盤にある関節部になります。
具体的には寛骨と仙骨をくっつけている関節で、強力な靭帯で繋がっています。
この関節ですが、関節とは言っても肘や膝のように動くわでではなく、2~3ミリ程しか動かない関節です。
ですのでこの関節を痛めたとしても、病院の検査ではわからないことが多いです。
唯一わかるのが、患者さんに痛い部分を指さしてもらうことです。
この場合、ほとんどの方が上後腸骨棘(赤丸部分)という骨が尖がっている場所を指さします。
まあ、はっきり言って仙腸関節障害を判断するのはかなり複雑で難しいのですが・・・。
この仙腸関節ですが、関節部の周りには細かい神経(特に臀部の神経)がたくさん伸びています。
仙腸関節が障害をうけることにより、これらの神経が敏感になってしまうと、臀部、鼠径部、大腿等に放散痛を引き起こします。
施術に関しては、障害のある側の仙腸関節部を鍼で緩めます。
ただ仙腸関節は非常に強固な靭帯なので、そこに鍼を刺すのは結構な技術が必要になります。
鍼で仙腸関節部がしっかりと緩んで、血流が改善すれば痛みも楽になっていきます。
また仙腸関節の周りの筋肉もしっかりと緩めるのも必須になります。
ですので当院では仙腸関節部に加えて、関連する筋肉、神経にもしっかりとアプローチを行うようにしています。
とにかくこの疾患でお悩みの方は、長時間の姿勢(座りっぱなし)には気を付けましょう。
特に硬い椅子に長時間座っていると、仙骨が直接椅子に当たってしまうので痛みの誘発になります。
また仙腸関節部には薄い筋肉しかありません。
ですので冷えるとてきめんに神経が過敏になります。
基本は冷やさないようにしてください(特に朝方)。
もし激痛が何日も続くようであれば、まずは病院でしっかりと検査をしてください。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。