半年程前から、ゴルフをすると左肘(内側)が痛い。
病院でレントゲンを撮ったが骨には異常が無かった。
診断名は「ゴルフ肘」。
一応、痛み止めの内服を処方された。
原因はゴルフと自分でも分かっているので、ゴルフを休めばよいのだが、仕事の接待でゴルフをすることがほとんどなのでなかなか休むことが出来ない。
薬物以外で何かないかと模索している時に、鍼灸を思い出した。
昔、ぎっくり腰をしたときに鍼をしたら楽になった経験があったので今回も肘の痛みが楽になるかと思った。
昔に鍼をしてもらった鍼灸院は今の自宅から遠いので、近くを探したら当院を見つけた。
詳しくホームページを見て、詳しく載っていたので試しに来院された。
痛みの性状をお伺いすると、ズキズキと痛むことが多い。
痛い動作としては、雑巾を絞る、何かを引っ張ると痛みが出る。
ゴルフは特に痛く、長時間グリップを握っていると痛みが悪化して辛い。
最近では、パソコンをしていても痛みが出るようになった。
触診すると、左肘の内側にかなりの圧痛がある。
前腕の屈筋群は過度の緊張がある。
肩甲骨周囲の筋肉にも過度の緊張が見受けられる。
痛みの性状は、握ったときに悪化している。
痛む場所は「内側上顆」である。
これらを総合すると、左のゴルフ肘(内側上顆炎)であることは間違いない。
伏臥位で、肩甲骨周囲の筋肉に鍼治療。
仰臥位で、左の前腕屈筋群、内側上顆(靭帯)に鍼治療。
痛む部分に微弱電流を流す。
前回の施術でだいぶ楽になっている。
施術は前回同様。
痛みはだいぶ楽になっている。
雑巾を絞る動作をしても、前ほど痛くならない。
施術は前回同様。
痛みはだいぶ楽になっている。
明日、ゴルフなので無理なくプレーしてみる。
施術は前回同様。
ゴルフでプレーしてみたが、前ほどの痛みは発症しなかった。
施術は前回同様。
普段の動作では、痛みは全くない。
施術は前回同様。
今回の症例は、俗に言う「ゴルフ肘」です。
同じような症状に「テニス肘」「野球肘」があります。
いずれも使い過ぎによる肘関節の損傷が原因です。
因みに、ゴルフでは肘の内側に、テニスでは肘の外側に痛みを発症します。
ゴルフはクラブを絞るように握ってプレーするので、どうしても前腕の屈筋群に過度のストレスがかかってしまい、結果的に内側上顆という関節に炎症を引き起こします。
関節部なので、筋肉~関節の間に付着する「靭帯」が損傷をうけて炎症を引き起こす状態になります。
治療に関してですが、内側上顆炎は関節部の炎症なので、基本は安静にしていればほどんどが改善します。
しかし、今回のように仕事の一環としてゴルフをしなくては行けない場合は、なかなか休むことができません。
この場合、関節部の炎症をなるべく引き起こさないようにすることが重要になります。
一般的には、消炎鎮痛剤の内服が効果的ですが、長期の服用だと副作用の心配がでてきます。
その他には、サポーター、運動療法、アイシング等があります。
では鍼灸では、どのような作用機序で内側上顆炎を改善していくのでしょうか。
鍼灸院によって施術の方法は違いますし、考え方にも違いがあります。
因みに当院では、前腕の屈筋群、背部の筋肉群を鍼でしっかりと緩めます。
これに関しては、まずクラブを握ったりするときは前腕の屈筋群にストレスがかかって筋肉が過緊張を引き起こすので、鍼でそれらを緩めます。
ここで言う屈筋群とは、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、長掌筋、円回内筋になります。
また上記の筋肉の先にくっ付いている「腱(靭帯)」が炎症を引き起こすので、その部分にも鍼をして炎症を抑えていきます。
背部の筋肉に関しては、ゴルフのスイング、体勢等で三角筋、僧帽筋、棘下筋等にストレスがかかって硬くなるので、鍼でしっかりと緩めます。
これらの筋肉を鍼でしっかりと緩めてあげれば、肘関節のストレスが減っていくので痛みを起こしにくくなるのです。
また関節の炎症がある場合は、微弱電流を流すようにしています。
微弱電流は炎症を抑える作用があるので、当院では炎症性疾患の改善に使用しています。
最後に自分でできる予防法ですが、ゴルフをした直後は患部をしっかりとアイシングすることです。
とかく関節は使いすぎると「熱」を持ちます。
それを放っておくと、炎症になって組織を破壊してしまい慢性的な痛みに悩むことになってしまいます。
ですので使った直後に15分程、氷嚢、保冷剤などでしっかりと患部を冷やせば、炎症を起こさずに済むのです。
面倒でやらない人も多いのですが、末長くゴルフをしたいのであれば、アイシングはしっかりと行ってください。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。