顔面神経麻痺という言葉はほとんどの方が聞いたことがあると思います。
この疾患に罹患すると、顔の半分が動かなくなってしまう怖い疾患です。
顔面神経は脳神経のなかのひとつで、顔の表情を作る筋肉を支配している神経です。
因みに顔面神経はの神経のなかの第七脳神経になります。
また顔面以外にも味覚、涙、唾液の支配神経でもあります。
まず顔面神経麻痺は幾つかの種類に分かれます。
種類によって原因が違うので以下に説明します。
交通事故やスポーツでの怪我などによって顔面神経を損傷した場合に麻痺を発症する場合があります。
また手術等で顔面神経を傷つけた場合にも麻痺を発症する場合もあります。
単純ヘルペスウイルスは口唇ヘルペス等が有名です。
このヘルペスが顔面神経に罹患すると「ベル麻痺」という顔面麻痺を引き起こします。
水疱瘡のウイルスです。
帯状疱疹ウイルスが顔面神経に罹患すると「ハント症候群」という顔面麻痺を引き起こします。
顔面神経麻痺で最も多くを占めるのは「ベル麻痺」で約60%以上を占めます。次にハント症候群が約20%を占めています。
顔面神経麻痺を発症すると、顔の半分に麻痺がでます。具体的には以下の症状です。
これらの症状は程度によって個人差がありますが、基本的には上記の症状が重なって発症します。
顔面神経麻痺を発症したら、一刻も早く医療機関で治療を開始してください。
この疾患は治療が遅れると改善率がグッと下がってしまいます。
できれば入院して治療に専念した方が良いと思います。
病院では主に「ステロイド」が中心になります。
入院の場合は点滴で、通院の場合は内服薬になります。
またウイルスの増殖を抑えるため「抗ウイルス薬」が投与される場合もあります。
薬物での治療が上手くいかない場合で症状が重度の場合は外科的処置を行う場合もあります。
予後に関しては、軽度のベル麻痺であればほとんどの方が完治します。
しかし重度の場合は個人差があり、完治が難しくなる場合も多々あります。
またハント症候群に関しては、ベル麻痺より難治になりやすく麻痺が残る可能性もあります。
外傷性の麻痺に関しては完治は難しく、改善率を上げる治療になります。
いずれにしても顔面神経麻痺は、年齢、重症度、生活環境等で改善率に個人差がある疾患と言えます。
稀ですが、合併症は幾つか報告されています。
主な合併症を以下にまとめます。
味覚障害 | 味覚を司る神経が麻痺すると物の味がわからなくなります。 |
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顔面痙攣 | 顔面が痙攣することがあります。 |
角膜の感染症 | 目が閉じないので角膜が渇いて感染します。 |
共同運動 |
神経が再生される途中で間違った経路で繋がってしまうことがあります。 |
ワニの涙 | 唾液と涙腺の神経の誤作動で食事すると涙がでます。 |
では顔面神経麻痺に対して、鍼灸治療はお役にたてるのでしょうか。
個人差はありますが、ほとんどの方が完治、改善しています。
まず顔面神経麻痺を発症した場合は、病院での治療が最優先になります。
病院では薬物治療が主になりますが、薬物(ステロイド等)は一週間~二週間しか使用できません。
それ以降は病院ではあまりすることは無いんです。
ですのでその段階で完治していれば問題ないんですが、ほとんどの方はまだ麻痺が残っている場合が多いです。
このような場合、第二の選択肢として鍼治療が効果的なんです。
では何故、顔面神経麻痺に対して鍼治療が良いのでしょうか。
それは麻痺した筋肉に鍼をすることによって、血行が改善して神経の再生を促進するからです。
もちろん鍼灸院によって考え方は様々なんですが、当院では主に麻痺した顔面部を直接鍼で刺激して新陳代謝を改善して顔面神経の再生を促すことを一番に考えます。
具体的には以下のポイントに鍼をすることが多いです。
これらのポイントにしっかり鍼をしていきます。
また顔面部以外にも、首、肩、背部にも鍼をしていきます。
これは首、肩、背部の筋肉も同時に緩めることによって、顔面への血流を一層促進することが出来るからです。
軽度のベル麻痺で発症後一週間以内であれば十分完治は期待できます。
発症後二か月を過ぎると改善率は下がっていきます。
ただし、時間が経ってしまった場合でも諦めないでください。
完治は難しくなりますが、六割~七割程の改善は十分可能です。
またハント症候群に関してもベル麻痺に比べると改善率は下がりますが、しっかりと鍼治療すればほとんどの方が改善はします。
一刻も早く病院に行ってください。この疾患は早期の治療が必須です。
まったく問題ありません。
患者様の体格、体質、年齢によって違いますが、顔に使用する鍼はなるべく細い鍼を使用して二㎝前後刺します。
まず顔面麻痺になると神経が死滅します。その後顔面神経は再生するのですが、鍼をすると新陳代謝が高まり神経の再生が早くなります。
発症後半年以内であれば適応と考えています。ただ時間が経ってしまった場合、完治は難しくなり改善率を上げる施術になります。
発症後であれば、週に二回~三回のペースで通ってください。あまり間を空けない方が改善率は高まります。
ハント症候群はベル麻痺に比べると改善率は下がると言われています。しかし個人差があるので一概には判断できません。ハントでも十分改善する方はたくさんいます。