腰は慢性的にこり、張り、軽い痛みがあったが、三か月程前から更に痛くなる。
特に右の腰が痛く、朝起きた時、動かしはじめ、疲れが溜まると痛みを感じる。
整形外科でレントゲン、MRIを撮ったが、骨には異常は無かった。
痛み止めを処方されて服用すると痛みは落ち着くが、切れると痛みがぶり返す。
職場の同僚が当院に来院されていたので、鍼治療はしたことがなかったが紹介で来院された。
痛みの性状を詳しくお聞きすると、動かしはじめが特に痛む。
しばらく動いていると徐々に痛みは治まってくる。
お風呂に入っていると、とても楽。
足へのしびれ等は無い。
仕事は配送の仕事で、重たい荷物を持つので腰には負担をかけている。
触診では、腰全体の筋肉が硬いが、特に右の腰の筋肉は異常に硬い。
MRIで骨の異常は無い、問診で足へのしびれが無い等を考慮すると、ヘルニア、狭窄症等は除外できる。
朝起きたときの痛み、動かしはじめの痛み、動いていると楽になる、お風呂で楽になる等を考慮すると。
筋肉疲労が原因の筋膜性腰痛と推察される。
伏臥位で、腰の筋肉を中心に、背中、肩、大腿裏の筋肉の緊張部に鍼治療。
右上の側臥位で、特に硬くなっている筋肉の緊張部に、中国鍼治療。
前回の施術後、かなり楽になった。
施術は前回同様。
朝、起きたときの痛みはまったく無い。
仕事が終わると腰の疲れがまだある。
施術は前回同様。
痛みは全く気にならない。
仕事中も腰が楽。
施術は前回同様。
今回の症例は、典型的な「筋・筋膜性腰痛」だと思います。
筋・筋膜性腰痛とは、簡単に言ってしまえば「筋肉が原因の腰痛」ということです。
よく「腰痛の85%は原因不明」と言われます。
これはどういうことかと言うと、「病院で検査をしても原因が分からない腰痛が85%あります」ということなのですが。
はっきり言って病院で原因が分かる腰痛は、骨、靭帯、内臓が原因の腰痛です。
ですので筋肉が原因の腰痛に関しては原因不明となってしまうのです。
なので筋肉が原因の腰痛に対しては、病院ではこれといった治療が無いのが現状です。
そうなると患者さんはどうしてよいかわからず、整体、接骨院、マッサージ、鍼灸等に流れていくわけです。
因みに当院のような鍼灸専門院は、慢性的で頑固な腰痛の方の来院率が高いです。
こらは何故かというと、鍼灸はどうしても敷居が高くなるので、患者さんは最初は接骨院や整体、マッサージに行きます。
そこで症状が改善すれば問題無いのですが、改善しなかった場合に「鍼治療でもしてみようか」となるわけです。
つまり鍼灸院に来院されるような方は、症状が頑固な場合が比較的多いということです。
ですので当院では、今回の症例のような頑固な腰痛に関しては、鍼でしっかりと筋肉にアプローチするようにしています。
つまり腰の筋肉の表面ではなく、深部にまでしっかりと鍼を刺していきます(あくまでもケースバイケースですが)。
腰の筋肉は他の部位に比べると、とても分厚いので、しっかりと深部にまで鍼を届かせてあげれば、かなりの確率で筋肉が緩んでいきます。
そして深部の筋肉が緩めば、筋肉内に存在する血管の締め付けが緩み血行が改善します。
また筋肉内にある神経の締め付けが緩めば「痛み」の感覚も無くなっていきます。
このように当院では筋肉が異常に硬くなった頑固な腰痛に対しては、しっかりと鍼をして硬くなった筋肉を緩めることを最優先にしています。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。