「顎が痛い」といって当院に来院される方は年々増えているようです。
問診時に詳しく症状を伺うと「顎が開かない」「食事をすると顎が痛い」等の症状を訴える場合がほとんどです。
これらを総称して「顎関節症」と言います。
顎関節症は要するに、顎が何らかの原因によって機能的なトラブルを起こしている疾患と言えるでしょう。
では顎関節症の原因とは何なのか・・・。
様々あると思いますが、私の経験から言えばほとんどが「ストレス」で間違いないと思います。
要するに過度の精神的・肉体的ストレスが長期に及ぶと、顎や顎の周囲に機能的なトラブルが発症するわけです。
ではストレスがどのように顎に影響を及ぼして痛みを発症させるのか説明してみましょう。
まず過度のストレスを抱えている人の場合、身体には様々な悪影響を及ぼします。
そのなかのひとつに「歯ぎしり」「食いしばり」があります。
「歯ぎしり」に関しては、ほとんどの方が知っていると思います。
寝ている時に、歯を左右にギシギシと動かします。
このような状態になると、歯が擦れるので「ギギギ~」といった不快な音が鳴ります。
なので歯ぎしりの場合、隣で寝ている人は不快な音で気づいて後で本人に伝える場合がほとんどです。
一方、「食いしばり」はどのような状態なのでしょうか。
食いしばりは、読んで字のごとく上下の歯を強い力で噛みしめる行為です。
食いしばりの場合、歯ぎしりと違って音がでません。
ですので周りに気づかれずらいといった特徴があります。
この「歯ぎしり」「食いしばり」ですが、これらを行っている人のほとんどはストレスを抱えています。
要するに過度のストレスが続いた場合、ストレスを解消する行為のひとつとして咀嚼行為を無意識に行っているのです。
では何故、咀嚼行為がストレス解消になるのでしょうか。
これは咀嚼行為を行うことによって脳のストレスが解消するからです。
もう少し具体的に説明すると、通常ストレスとは=脳のストレスとも言えます。
要するに様々なストレスを抱えることは、脳が不快な状態になっているということです。
わかりやすい例で言えば、「うつ病」「適応障害」等は過度のストレスが原因によって脳が機能不全になっている状態です。
ですのでこのように脳がストレスを感じた場合、無意識にストレスを発散する行為を行います。
そのひとつとして「歯ぎしり」「食いしばり」があります。
実は「歯ぎしり」や「食いしばり」などの咀嚼行為を行うと、脳から「ドーパミン」というホルモンが分泌されます。
ドーパミンは別名「快楽物質」とも言われ、要するにドーパミンが出ることによって脳が気持ちよくなりストレスが発散されるのです。
このようなことから歯ぎしり、食いしばり等の咀嚼運動は、脳のストレスを取り除く行為と言えるのです。
咀嚼行為を行うことによって、脳のストレスが軽減することは良いことです。
しかし、それによって顎関節に多大な代償を及ぼすことになってしまったのです。
とにかく「歯ぎしり」「食いしばり」は、無意識に行う行為であり、しかもかなりの力で噛みしめます。
それによって顎の関節に物凄いストレスがかかってしまい、組織を損傷する場合もあります。
このような状態になると「顎関節症」といった疾患になるのです。
一般的に顎関節症を発症すると、様々な症状を引き起こします。
具体的には・・・・
顎関節周囲の筋肉が硬くなることによって、口を開けることが困難になります。
顎関節に炎症がある場合、痛みを発症します。
顎関節周囲の筋肉が硬くなって炎症を発症すると物を噛んだときに痛みを感じます。
顎関節の周囲の筋肉が硬くなると、口を開けたときに関節が引っ張られてズレます。
強度の咀嚼運動は「側頭筋(こめかみ)」を負担をかけるので、その結果として「筋膜性頭痛」を発症する場合があります。
上記の頭痛と同じ原理で、首~肩の筋肉に負担がかかるので、どの結果として、首、肩のこりを発症する場合があります。
顎関節と自律神経は深い関係にあるので、顎関節症が長引くと自律神経の悪影響を及ぼして様々な自律神経疾患を発症する場合があります。
このように顎に負担がかかってしまうと個人差はありますが、上記のような症状を発症して苦しむことになります。
では、この顎の痛み(顎関節症)を治す為にはどうしたらよいのでしょうか。
それは原因となっている「ストレス」を取り除くことが重要です!
逆を言うと、ストレスを取り除かないと完治させることは難しいと思います。
しかしストレスの種類によると思いますが、ほとんどの場合において今あるストレスを取り除くのは環境的に難しい場合がほとんどだと思います。
特に仕事関係、家庭関係が原因になっている場合等は難しいと言わざるをえません。
これらのことから、ストレスが原因になっている顎の痛みを100%治すのは難しいと思います。
そもそも「過度のストレス→歯ぎしり・食いしばり」に関しては、寝ているときに「無意識・本能的」に行っている行為です。
ですのでこれらの行為を意識して止めるのは無理です。
やはり原因となっている「ストレス」を取り除いていかない限り、無意識に歯ぎしり・食いしばりを行うでしょう。
また睡眠中以外に関しても、仕事中等に無意識に噛みしめ行為を行っている人も多いようです。
この場合も無意識なので、意識して治すのは難しいと思います。
ではどのように対象していけばよいのでしょうか。
結局のところ、顎の痛み(顎関節症)については「予防が大事」ということになります。
要するに、顎が痛み出したり、動かなくなったら早めに対策するということです。
例えば、歯医者ではほとんどにおいて「マウスピース」をして寝ることを勧められます。
これは歯ぎしり、食いしばりから歯を守るためです。
また「ボトックス」の注射を行って、筋肉を動きを制御する治療もあります。
このようにストレスを排除出来ない場合は、予防していくしかないと思います。
しっかりと予防できれば、完全に治すことは出来なくても高い確率で顎の痛みを抑えることは可能だと思います。
では当院のような「鍼治療」を行っている施術院は、顎の痛みに対して有効なのでしょうか。
もちろん個人差はあると思いますが、「有効」だと思います。
当院にも「口を大きく開けることができない」「物を噛むと顎が痛い」といって来院される方は一定数います。
当院ではそのような方に対して、鍼を使って顎の可動域を広げたり、痛みを改善していきます。
施術内容に関しては、ほとんどにおいて「顎周囲の筋肉を緩める」ことや「顎周囲の炎症を抑える」ことを行います。
まず「口が開かない」に関しては、ほとんどの場合「顎に関連する筋肉が硬くなって」います。
ですので鍼で顎を動かす筋肉にアプローチして、筋肉を緩めます。
また痛みがある場合は、顎の周囲に炎症を引き起こしている場合がほとんどです。
この場合、鍼から微弱電流等を流して炎症を抑えます。
これらに加えて、関連する筋肉(首、肩、肩甲骨周囲)を鍼で緩める場合もあります。
これらを数回行うことによって、ほとんどの方が症状の改善をみています。
しかし先ほど説明したように、あくまでも「対処療法」です。
しばらくは良くなっていても、また再発していきます。
要は原因となっている「ストレス」をなんとかしないと、歯ぎしり・食いしばりは治まらないというわけです。
顎の痛みで悩んでいる人は多いと思います。
そしてほとんどの場合、ストレスが原因となって顎の痛みを発症します。
ストレスが多い人は、睡眠中の歯ぎしり・食いしばりに加えて全身の緊張も酷いようです。
この場合、朝起きても疲れがとれておらず逆に怠くなっている場合が多いようです。
当院に顎の痛みで来院される方も、ほとんどが「睡眠が浅い」「嫌な夢ばかり見る」「寝返りをしていない気がする」「起きても疲れが抜けていない」と言います。
それだけ普段の生活でストレスがかかっていると容易に推察できますね。
とにかく、ストレスはなるべく抱えない方がよいとは思いますが、環境を変えない限り難しいと思います。
それが出来れば苦労はしないですよね。
ですので「口が開かない」「顎が痛い」等の症状がでたら早めに対処してください。
放っておいても治りませんので。
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