六週間程前から、右の顎が痛くなる。
特に口を開けると痛みが出てしまい、口を大きく開けることができない。
口腔外科に行って診察を受けると「顎関節症」と診断された。
とりあえず鎮痛剤のみ処方されて様子をみることに。
その後、歯科医に行って診てもらったところ「右の奥歯がすり減っている」と歯ぎしりを指摘された。
型をとって「マウスピース」を作った。
しばらくは寝るときにマウスピースを付けていたが、気になってしまい止めてしまった。
ネットで検索していると「鍼治療」が良いと載っていて興味がわいた。
自宅の近くの鍼灸院を検索すると当院のホームページを見つけ、電話で問い合わせをいただいた。
一通り、顎関節症に対しての鍼治療を説明して納得をいただき来院された。
痛む時間帯を聞くと朝起きたときが一番辛く、右顎がかなり痛い。
特に口を開けると痛みが出て、大きくは開けられないし、硬い物も痛みが出て噛めない。
実際に痛いところまで口を開けてもらうと、指三本分程しか開かない。
触診で、右の顎周囲を触ると筋肉が異常に硬くなっている。
また右の胸鎖乳突筋、側頭筋も異常に硬い。
私生活では、小さい子供が二人いて育児の真っ最中である。
毎日イライラして、精神的にもストレスが多い。
口の開閉障害、痛み、歯の損傷がある。
これらを踏まえると右の顎関節症が推察される。
伏臥位で、首、肩、肩甲骨周囲の筋肉に鍼治療。
右上の側臥位で、顎関節部、顎周囲の筋肉、側頭筋、胸鎖乳突筋に鍼治療。
温灸器を顎関節周囲にかける。
あまり変化は無し。
施術は前回同様。
首、肩は楽になった。
口は多少、開くようになってきた。
施術は前回同様。
首、肩は楽。
睡眠も深く寝れるようになった。
口を開いても痛みは無くなった。
施術は前回同様。
体の疲れがだいぶ取れた感じ。
イライラもずいぶん減った。
口も開くし、硬い物を食べても痛みは無い。
施術は前回同様。
今回の症例は、一般的に言う「顎関節症」だと思います。
顎関節症になると、とにかく口が開かなくなります。
また硬い物を噛むと痛みが出ます。
では何故、顎関節症になってしまうのかというと原因は様々ですが。
なかでも「歯ぎしり」「食いしばり」が原因の場合が多いと思っています。
寝ている時に、ものすごい力で噛むので顎へのストレスは半端ではありません。
この状態が何日も続くと、顎の関節に炎症を起こしたり、周囲の筋肉が拘縮してしまいます。
このような状態になると、筋肉が伸びないので口が開かなかったり、硬い物を噛むと炎症で痛みが出たりするのです。
ではこの原因となる「歯ぎしり」「食いしばり」ですが、そもそもどうして寝ている時に無意識に噛んでしまうのでしょうか。
それは「ストレスを無意識に発散するため」です。
そもそも口(顎)を強く噛むと、脳から「ドーパミン」という脳内物質がたくさん分泌されます。
ドーパミンはセロトニン、オキシトシン等と並ぶ「幸せホルモン」とも言われていて、要するにドーパミンが出ると脳のストレスが軽減されるのです。
ですので「歯ぎしり」「食いしばり」をする人のほとんどは「ストレス過多」の生活を送っている場合が圧倒的に多いのです。
実際に当院に来院された顎関節症の方達は共通して「過度のストレス」を抱えている場合がほとんどです。
では、顎関節症に対しての治療法は確立されているのでしょうか。
残念ですが、今のところこれといった治療法はありません。
ですのですべてが対処療法になります。
一般的には、鎮痛剤、マウスピース、マッサージ療法等があります。
もちろん鍼灸治療も顎関節症には有効だと思いますが、やはり対処療法になります。
当院では主に顎関節を動かす時に作用する筋肉(咬筋、側頭筋、内外翼突筋)等にしっかりと鍼をして硬くなった筋肉を緩めます。
また関連筋(胸鎖乳突筋、後頚部筋)等にも鍼をして筋肉の緊張を緩めます。
また私生活でストレスが多い生活をしている場合が多いので、自律神経のポイント等にも鍼、温灸等をしていきます。
その結果
心身共に緊張が和らぐと、本能的に歯ぎしり、食いしばりの回数が減るので、結果として顎への負担が減って関節の痛みが改善していきます。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。