半年ほど前から、右のまぶたが「ピクピク」と痙攣するようになる。
特に疲れが溜まっていると頻繁に痙攣する。
病院で診察すると「眼瞼ミオキミア」と診断された。
一応、眼精疲労で使用される「点眼薬」を処方されて終了となった。
しかしここ最近になって痙攣の回数が増えていて、しかも長時間ずっと痙攣している。
悩んでいると、夫が腰痛で当院に来院していたことがあり「鍼灸を試してみたらどうか」と勧められる。
鍼灸ははじめてだったが、少しでも良くなればと来院された。
痙攣の頻度を伺うと、ほぼ毎日痙攣している状態。
一旦、痙攣が始まると数時間はずっと痙攣している。
痙攣自体は、目が塞がるほどではない。
痙攣が起きると、かなりのストレスを感じてイライラが激しくなる。
イライラが激しくなると、更に悪化するので悪循環である。
痙攣以外では、首、肩のこりが昔から激しい。
私生活では仕事はしていないが、両親の介護が大変で、ストレスがとても多い。
眠りは浅く、なかなか寝付けないし、途中で起きてしまうとそこから眠れない。
片頭痛持ちで、市販の鎮痛剤を頻繁に服用している。
身体診察を行うと、首の緊張がとても激しい。
背中の緊張も酷い。
側頭部、顎周囲の筋肉も硬くなっている。
まぶたの痙攣。
痙攣の性状は、軽度、持続時間が長い、ストレスとリンクしている。
これらを総合すると、眼瞼ミオキミアだと推察される。
仰臥位で、右目の周り、側頭部、顎関節、手、足に鍼治療。
右目の周りに温灸器を充てる。
伏臥位で、首、肩、背中に鍼治療。
首、肩に温灸器を充てる。
首のこりは楽になっている。
右まぶたの痙攣はまだ変化なし。
施術は前回同様。
首のこりは楽。
右まぶたの痙攣は変化なし。
施術は前回同様。
首のこりは楽。
夜は少し深く眠れるようになった。
右まぶたの痙攣はしているが、発作の時間が短くなっている。
施術は前回同様。
体全体が軽くなった。
睡眠も深く眠れる。
右まぶたの痙攣も、だいぶ落ち着いているようになった。
体は楽になっている。
睡眠も深く眠れる。
右まぶたの痙攣も、ほとんど気にならない。
施術は前回同様。
体は楽。
睡眠も問題ない。
イライラもだいぶ落ち着いている。
右まぶたの痙攣も、ほとんど発症していない。
施術は前回同様。
今回の症例は「眼瞼ミオキミア」という疾患です。
「眼瞼ミオキミア」という言葉は、ほどんどの方が聞いたことがないと思います。
この疾患は簡単に説明すると、「眼輪筋」という筋肉が付随的に痙縮する状態を言います。
通常は、片方の目のみに発症します。
特に疲れが溜まったりすると、まぶたが「ピクピク」と勝手に動いてしまいます。
上記のような症状は、ほとんどの方が経験したことがあると思います。
しかし、これが長時間続くようになってしまうとかなり厄介な状態になります。
何しろ毎日、長時間、「ピクピク」とまぶたが動くので、相当なストレスで病んでしまいます。
この眼瞼ミオキミアですが、原因は何なのかと言いますと。
ほとんどが「ストレス」です。
現にこの疾患に罹患する人は、精神的・肉体的に過度のストレスを抱えている場合がほとんどです。
過度のストレスが長期間続くことにより、自律神経を通じて筋肉の痙攣を発症すると思われます。
因みに、ミオキミアと似た症状に「眼瞼痙攣」という疾患があります。
眼瞼痙攣も、まぶたが痙攣する疾患です。
しかし、ミオキミアと違い痙攣の症状がより重くなります。
ミオキミアの痙攣は、目が塞がるほどの痙攣ではないのに比べて眼瞼痙攣は目が見えない程痙攣が大きいです。
また眼瞼痙攣は、目が開けにくくなったり、光を眩しく感じたり、ドライアイが悪化したりします。
尚、ミオキミアは通常片方の目だけ症状が発症しますが、眼瞼痙攣は両目に発症します。
この眼瞼ミオキミアと眼瞼痙攣ですが、治療法もまったく異なります。
眼瞼ミオキミアに関しては、しっかりと肉体・精神のストレスを改善することです。
ストレスが改善されれば、症状も落ち着いていきます。
ですので眼瞼ミオキミアに関しては、鍼灸の適応症になります。
要するに、鍼灸治療で体や神経の疲労を緩めれば改善します。
一方、眼瞼痙攣に関しては私の経験から言うと、鍼灸治療をしても難しいと思われます。
何故なら、眼瞼痙攣は大脳基底核にある運動を抑制するシステムの機能障害が原因と言われているからです。
要するに「脳」の問題だということになります。
眼瞼痙攣に感しては、いまのところ完治させる治療法は存在しません。
対処療法になります。
医療機関では「ボトックス注射」が主になるようで、一回注射すると三か月程は症状が改善します。
また場合によっては「抗痙攣、抗不安、抗うつ」薬等の内服を処方する場合もあるようです。
まとめますと、眼瞼ミオキミアに関しては鍼灸が有効です。
当院ではこの疾患に対して、首、肩、背中(主に脊柱起立筋)の緊張を鍼でしっかりと緩めます。
何故なら、この疾患を発症する方は過度のストレスが酷く、その影響で脊柱起立筋の過緊張が激しいからです。
鍼で脊柱起立筋の過緊張を緩めれば、自律神経をかえして心身の緊張が緩みます。
またその疾患を発症する方は「歯ぎしり」「食いしばり」をしている場合がほとんどです。
ですので、側頭筋、咬筋等の筋肉にも鍼でアプローチしていきます。
それ以外では、頭、手、足にある自律神経のツボにも鍼灸でアプローチしていきます。
これらをしっかりと行うことによって、徐々にまぶたの痙攣は治まっていきます。
尚、ご自身でも生活の改善は必須です。
ストレスが多い生活は再発率も高くなるので、しっかりと生活改善をするようにしてください。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。