突発性難聴という言葉はほとんどの方が聞いたことがあると思います。
簡単に言えば、突然片方(稀に両方)の耳が聞こえなくなってしまう怖い病気です。
難聴のなかでも「感音難聴」という種類になります。
感音難聴とは、内耳から蝸牛神経、前庭神経を伝って脳に音が上手く伝わらない状態をいいます。
この病気を発症する方は、ほとんどが何の前触れもなく急に耳が聞こえなくなった、朝起きたら耳が聞こえなくなっていた場合が多いようです。
ですのでこのような状態になると、ほとんどの方が軽いパニックをおこしてしまい、急いで病院に駆け込むことがほどんどです。
原因に関しては「不明」とされています。
しかし、実際には「ストレス」「ウイルス感染」「過労」「寝不足」「不規則な生活」が原因と言われています。
実際にこの病気を発症する方のほとんどは、上記に挙げたような原因で発症する場合が多いです。
分かりやすい例で言えば、芸能人等がこの病気を発症することが多いようですが、芸能人は上記の原因のほとんどが当てはまっていると思われます。
尚、突発性難聴以外でも、急性低音障害型感音難聴やメニエール病等の耳の疾患に関しても上記の原因で発症する場合がほとんどです。
主な症状は「聞こえなくなる」ことでしょう。
個人差はあると思いますが、重度の場合は全く音が聞こえなくなります。
これは病院で聴力検査をすれば一目瞭然です。
上記は左耳の突発性難聴の方の聴力検査表ですが、低音~高音のすべての聴力が下がっています。
ここまで下がってしまうと、ほとんどの音を聞くことが出来なくなります。
また音意外では、「めまい」「耳鳴り」「耳のつまり」等を併発する方もいます。
突発性難聴を発症すると、耳の中はどのような状態になるのでしょうか。
これに関しては未だにはっきりとは分かっていませんが、いくつか有力な説を説明します。
元々、内耳に栄養を送っている血管はとても細く、本数も少ないです。
突発性難聴になってしまうと、その血流が更に悪くなってしまうと言われています。
内耳に新鮮な血液が送られなくなると、内耳の細胞が壊死してしまいます。
突発性難聴の原因で有力な説に「ウイルス感染」があります。
ウイルスに感染すると、炎症を発症します。
この炎症が内耳の細胞を破壊してしまいます。
血流障害、ウイルス感染からの炎症を発症した場合、内耳が壊死しやすくなりますが。
なかでも「有毛細胞」という細胞が壊死すると聴力が無くなってしまいます。
有毛細胞は蝸牛のなかにある細胞で、髪の毛のようにたくさん生えています。
この細胞が音を感知して振動し、脳に音刺激を流すことにより脳が音を理解します。
まとめますと、内耳に新鮮な栄養が送られなくなり、炎症も発症すると内耳にある有毛細胞が壊死してしまい、結果として聞こえなくなってしまうということです。
突発性難聴に関しては、現代の医学では確立した治療法はありません。
要するに「対処療法」になります。
一般的には「ステロイド」が基本になります。
早期にステロイドを使用することによって、内耳の炎症を抑えて細胞の壊死を防ぐわけです。
ストロイドは様々な投与法がありますが、入院した場合は点滴、外来の場合は内服で一週間~二週間程使用します。
また症状が思うように回復しない場合は、注射で直接内耳にステロイドを投与する場合もあります。
また病院によっては「高濃度の酸素」を用いた治療を行っています。
因みに、突発性難聴は発症したら直ちに治療を開始するのが鉄則です。
治療が遅れると完治は難しくなります。
なるべく発症したら、遅くても三日以内には治療を開始しましょう。
ネットで「突発性難聴・鍼灸」で検索すると、たくさんの鍼灸院がヒットします。
いずれも「突発性難聴には鍼灸がとても有効です」と謳っています。
では実際に突発性難聴には鍼灸治療が有効なんでしょうか。
あくまでも私個人的な見解を述べてみたいと思います。
まず、鍼灸治療で内耳の血流を改善することは可能です。
ですので突発性難聴を発症したら、早めに鍼灸治療を受けるのはアリだと思います。
もちろん治療の基本は「ステロイド」です。
ですのであくまでも鍼灸は補助的なものだと思っています。
しかし、鍼灸自体はこれといった副作用はないので、ステロイドと併用しても何ら問題はありません。
ですので病院の治療と併用して鍼灸を受ければ、相乗効果が期待できると思っています。
そのような考えから、当院では発症して二週間以内であれば鍼灸の効果は期待できると思っています。
だたし二週間を過ぎてしまった場合は、鍼灸治療をしても改善する確率はかなり下がると思います。
これは二週間を過ぎると、内耳の有毛細胞が壊死(抜け落ちて)してまうからだと言われているからです。
有毛細胞は、死んでしまうと再生はしません。
ですので壊死した後では、どんなことをしても治らないのです。
唯一可能性があるとすれば、残っている有毛細胞があったとしたら、鍼灸をすることによって残っている有毛細胞が活性化して死んでしまった有毛細胞の代理をしてくれる場合があるということです。
この状態になれば、多少は聴力が回復するかもしれません。
まあ、回復するといっても多少だと思いますが。
まとめますと、突発性難聴を発症したら早期の鍼灸治療はある程度は有効だと思います。
しかし、時間が経ってしまった場合は鍼灸をしても個人差はありますが難しいと思います。
因みに当院でも突発性難聴の問い合わせがありますが、上記の説明をしています。
発症して二週間以内であればお勧めしていますが、二週間を過ぎている場合は難しいことを説明して、それでも来院したいと言われれば六回くらいを目途に施術しています。
突発性難聴は、早期に治療を開始しても、三分の一は完治、三分の一はある程度の改善、残りは改善せず聴力を失うと言われています。
それほど怖い病気だと思います。
ともかく、突発性難聴を発症したらすぐにでも治療を開始しましょう。
できれば入院をお勧めします。
通院だと家のことしたり、仕事したりしてゆっくりと体を休ませることが出来ないからです。
とにかくこの病気は「早期の治療」が鉄則です。
仕事や家庭が忙しかったとしても、聴力を失ってしまったら取り返しがつきません。
しっかりと治療に専念してください。
補助的な意味で鍼灸治療もお役にたてると思いますので、病院の治療と併用しながらの鍼灸治療もお考えください。
症例ブログについて・・・
様々な疾患について、私なりの考えを書き綴っております。
なるべく簡素で分かりやすくお伝えできればなと思っております。
このサイトを見て、医療に関する一般の方への理解が深まれば幸いです。