「耳鳴り」とは、周りで何の音も鳴っていないのに、耳の中で様々な音が聞こえるという状態をいいます。
因みに「耳鳴り」とは病名ではなく、症状名になります。
耳鳴りの音は様々ですが、よく聞かれる種類としては「ゴー」「ボー」「ブーン」といった低い音や、「キーン」「カーン」「ピーン」といった高い音があります。
また代表的な耳鳴りの比喩として「蝉が鳴いている」と表現する人が多いようです。
この耳鳴りに関しては、ほとんどの方が経験があると思います。
しかしほとんどの場合は、耳鳴りがしたとしても短時間で勝手に消えていきます。
ですが人によっては耳鳴りが一向に消えることが無く、ずっと鳴り続けている場合があります。
このような状態になると、心身共にかなりのストレスを伴ってしまうことになるのです。
そしてこの耳鳴りですが、耳鳴りの原因や体質等によって「治りやすい」場合と「治りずらい」場合があります。
まず耳鳴りを発症する原因って何なんでしょうか。
様々な原因があると思われますが、代表的なものを以下に説明してみます。
突然、片方の耳が聞こえなくなる疾患です。
回転性のめまいを発症します。
脳腫瘍の一種です(ほとんどが良性)。
五十代から徐々に増えていくようです。
ロックコンサート等の大きな音、長時間のヘットホンでの大音量で発症します。
ストレスが原因で自律神経のバランスが崩れると発症する場合があります。
うつ病を発症すると、耳鳴りを発症する確率は高くなります。
低音のみが聞こえなくなります。
首肩こりが悪化すると耳に影響して、耳鳴りを起こす確率が高くなります。
耳管がくっ付いてしまったり、開きっぱなしになると、耳鳴りを発症する場合があります。
上記の疾患すべてが耳鳴りを伴うわけではありませんが、耳鳴りを発症する確率が高い疾患でもあります。
耳鳴りの種類、要するにどのような音が鳴っているのか。
様々ですが、基本的には「高い音」「低い音」に分けられます。
高い音は、「キーン」「ピーン」「カーン」といった音です。
低い音は、「ゴー」「ボー」といった音になります。
そして音の種類によって、どのような原因なのか、治りはどうか、ある程度の予測がつきます。
まず「高い音」ですが、「突発性難聴」「音響性外傷」「老人性難聴」等が原因の場合が多いようです。
それに対して「低い音」は、「メニエール病」「急性低音障害型感音難聴」「首肩こり」「自律神経失調症」等に多いようです。
まあ、一概には言えません、例外ももちろんありますが。
また人によっては、高音と低音が混ざって聞こえる場合もあって複雑です。
そもそも「耳鳴り」って治るのでしょうか。
当院のような鍼灸院にも、「耳鳴りって治りますか」といった問い合わせが頻繁にあります。
正直に言えば、耳鳴りを治すのは結構難しいと思っています。
特に何年も耳鳴りがある方の場合は、「耳鳴りが無くなった」といった話は聞いたことがありません。
耳鳴りの治療に関しては、西洋医学、東洋医学、他の療法等、様々な施術がありますが、耳鳴りをしっかりと治す治療法は今現在はありません。
要するにすべてが対処療法で、結果として良くなった人が一定数存在するといった状態です。
それだけ「耳鳴り」というのは難しい症状なのです。
先ほど耳鳴りを治すのは難しいと言いましたが、種類によっては治りやすい耳鳴りもあります。
ではどのような耳鳴りが治りやすいのでしょうか。
急性低音障害型感音難聴は、内耳の蝸牛にリンパ液が溜まりすぎている疾患です。
蝸牛がパンパンに膨らんでいると、音を上手く伝えられなくなるのでその結果として耳鳴りが発症すると思われています。
ですので蝸牛の浮腫みが改善すれば、耳鳴りも治まることがほとんどです。
首肩のこりが悪化すると、内耳の血流が悪化します。
この状態になると、人によっては耳鳴りを発症する場合があります。
このような場合は、首肩のこりを改善すれば内耳の血流も良くなって耳鳴りが改善していきます。
自律神経の交感神経が過剰に興奮すると血管が細くなるので内耳の血流が悪くなります。
また脳がストレスによって過剰に興奮した状態になるので、その随伴症状として「聴覚野」が過敏になって耳鳴りを発症します。
この場合、自律神経のバランスが安定すれば内耳の血流改善、また聴覚野の興奮が治まれば耳鳴りも治まります。
メニエール病に関しても、急性低音障害型感音難聴と同じで蝸牛の浮腫みが原因で耳鳴りが発症します。
ですので蝸牛の浮腫みが改善すれば、耳鳴りも治まることがほとんどです。
もちろん上記の疾患が改善しても、必ず耳鳴りも改善するとは限りません。
特に慢性化している耳鳴りの場合は、耳鳴りだけが残ってしまう場合も多々あります。
しかし早期に治療して症状が改善すれば、ほとんどの方が耳鳴りから開放される場合が多いのです。
とにかく「早期の治療」が絶対条件だと言えます。
また「治りずらい」耳鳴りに関しては、「突発性難聴」「音響性外傷」「老人性難聴」等があります。
これらに共通していることは「有毛細胞」です。
有毛細胞とは蝸牛内に存在していて、音を脳に送っている重要な組織です。
髪の毛のように数多くの有毛細胞が生えていて、音を認識して脳に信号を送りますが、上記に挙げた疾患に罹患すると有毛細胞が死んでしまいます。
死んでしまった有毛細胞は音の信号を脳に送れません。
この状態になると脳が音を認識できないので、その反動として「耳鳴りを発症させてしまう」といった説が有力です。
厄介なのは有毛細胞は死んでしまうと再生しない細胞なんです。
ですので上記の疾患に罹患して、結果的に有毛細胞が死んでしまうと治しようが無いのです。
つまり永続的に脳からは耳鳴りの信号が送られてしまうことになります。
この状態になってしまうと、耳鳴りを直接治すのは無理です。
残る治療法としては、なるべく耳鳴りを気にしないような状態にもっていくような治療になります。
ただ人によっては多少の有毛細胞が残っている状態で「補聴器」等で、聴力がある程度回復した場合に限り、耳鳴りが治まる場合もあるようです。
「鍼灸・耳鳴り」で検索すると、たくさんの鍼灸院がヒットします。
そのほとんどが「鍼灸で耳鳴りが改善」と謳っていることが多いようです。
では実際に、鍼灸治療で耳鳴りは治るのでしょうか。
あくまでも私の意見になりますが、「難しい」と言わざるを得ません。
もちろん、耳鳴りが治った人もいます。
しかし、確率としてはあまり高くありません。
まず、突発性難聴、音響性外傷、老人難聴等の疾患が原因で耳鳴りを発症している場合は、治る確率はかなり低いです。
これは先ほどの「有毛細胞」が関係するからです。
有毛細胞が死滅している場合は、音が電気信号に変換して脳に送られないので、結果として脳が興奮してしまい、聞こえない音を補おうとして実際には存在しない音(耳鳴り)を作ってしまうからです。
有毛細胞は一度死んでしまうと再生はしないので、何をしても治りません。
ただし100%耳鳴りを治すのは無理だと思いますが、人によっては「耳鳴りが多少小さくなった」という場合もあります。
これは鍼灸治療を行うことによって、脳の興奮が和らいだりして音が小さくなったと思われるのですが、詳しくはわかりません。
このようなことから当院では、突発性難聴、音響性外傷、老人性難聴に対しての耳鳴りの施術は難しいと説明しています。
一方、急性低音障害型感音難聴、首肩こり、メニエール病等が原因の耳鳴りに対しては改善が期待できます。
これらの疾患は、蝸牛の浮腫み、内耳の血流相が原因であり、有毛細胞は関係ないからです。
つまり蝸牛の浮腫みや内耳の血流障害は、鍼灸で改善する確率が高いと言えます。
特に症状を発症してすぐに鍼灸治療を開始すれば、ほとんどの方が耳鳴りを改善することが可能だと思います。
しかし何年も耳鳴りが発症している、要するに「慢性化」している耳鳴りに関しては難しくなります。
これは耳鳴りがずっと続いていると、脳が耳鳴りを記憶してしまうと言われているからです。
一旦耳鳴りを記憶してしまった脳は、簡単に記憶を外すことはできないと思います。
ここが耳鳴りの施術の難しいところだと思います。
また自律神経失調症が原因の場合も、個人差があって難しいです。
自律神経失調症になると、間違いなく脳が興奮して過敏になっています。
この状態になると耳鳴り、聴覚過敏等を発症しやすくなりますが、脳の興奮が治まると勝手に症状が無くなっていきます。
しかし脳の興奮を改善するのが難しく、生活環境の見直し、人間関係等、要するにストレスを下げるのが大変です。
鍼灸治療は自律神経のバランスを整えたり、体の緊張を取るので、上手くいけば短期間で耳鳴りを小さくすることが可能と思います。
しかし個人差がかなりあって、ケースバイケースですね。
耳鳴りで悩まれている方は、数多くいると思います。
しかし今現在でも、耳鳴りを完治させる治療法は存在せず、完全は作用機序もわかっていません。
最近では、耳鳴りは耳で鳴っているのではなく、脳で鳴っているというのが定説なようです。
実は私自身は「片頭痛」持ちなのですが、片頭痛が悪化すると耳鳴りがすることが多々あります。
これに関しては、おそらく片頭痛で脳が敏感になると聴覚野が興奮して、普段では気にも留めない耳鳴りが大きくなっていると思われます。
このように耳鳴りを小さくしたいのであれば、脳の興奮を抑えることが重要なんだと思います。
耳鳴りを患っている方は、耳鳴り自体がストレスになってしまい、余計に耳鳴りを意識するので脳が過剰に興奮してしまうようです。
こうなると「負のスパイラル」に陥ってしまい、ますます改善が悪くなってしまいますので。
因みに当院では、首肩の筋肉を緩めて内耳の血流を改善したり、自律神経のバランスを整えて脳の興奮を和らげることを重要視しています。
その結果として、耳鳴りが少しでも改善すれば幸いです。
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