夜・寝つきが悪い、眠りが浅く十分寝た気がしない、寝ても途中で起きてしまう、朝早く起きてしまう等、良く寝れないため、日中に眠い、注意力が散漫になる、体調がすぐれない等、様々な体調の変化が起きる状態を「不眠症」と言います。
統計によると、10人に1人の割合で不眠症の人がいるとされています。
年齢としては二十代から始まって、加齢とともに増加していき、中年、老年にかけて急速に増加します。
男女比では、男性よりも女性に多いとされています。
不眠症にはいくつかのタイプがあります。
寝つきが悪く、30分以上経過しても眠ることができない。
途中で目が覚めてしまい、そこから眠ることができない。
朝、早く目が覚めてしまう。
しっかりと寝た気がしない。
尚、上記の四つは単独の場合もありますが、複数が組み合わさって起きる場合もあります。
不眠症になってしまう原因は人によって様々です。
原因によっては個人で対処できる場合もありますし、医療機関での治療が必要になる場合もあります。
ここでは不眠症を引き起こす主な原因や対処法を紹介してみます。
精神面での「ストレス」が原因の不眠です。
心理的なストレスになるので、「人間関係」「仕事のプレッシャー」「家族・友人の死別」等があります。
対処法としては、ストレスになっている原因をしっかりと見直して、軽減できるようであれば行動に移しましょう。
自分ではどうしようもない場合は、周りのサポート、カウンセリングが有効です。
肉体面での「ストレス」が原因の不眠です。
「腰痛」「神経痛」「リウマチ」「喘息」等の不快症状があると眠りが浅くなります。
対処法としては、症状を引き起こしている疾患を治療することで改善する場合がほとんどです。
「うつ病」「不安障害」「パニック障害」等、一般的に言う精神疾患が原因の不眠です。
精神疾患の場合、ほとんどが不眠の症状を訴えます。
対処法としては、医療機関での治療が必要です。
症状の改善とともに、不眠も改善していきます。
服用している薬やアルコール、カフェイン、ニコチン等が原因で起きる不眠です。
特に脳の中枢に影響を与える物質を長期服用している場合に起きやすいです。
対処法としては、嗜好品の見直しです。
過度に摂取している場合は、減らせるのであれば減らしましょう。
受験勉強、海外旅行、夜勤等、昼夜逆転の生活をしていると不眠を起こしやすくなります。
対処法としては、ライフスタイルを見直すのが一番ですが、仕事の場合は難しい部分もありますね。
不眠症に対して、医療機関ではどのように治療しているのでしょうか。
まず生活環境が原因の場合については、私生活の見直しが提案されるようです。
「深酒しない」「昼夜逆転の生活を改める」「ストレスを減らす」等、規則正しい生活ですね。
また最近では、パソコン、スマホ等の「光刺激」も不眠に関係すると言われます。
ブルーライトを夜になっても見ていると、脳が興奮してしまい寝れなくなります。
なので寝る直前までスマホ、パソコンを見るのは止めた方が良いです。
しかし生活環境を見直しても改善しない、または不眠症自体が重度の場合は薬物療法が用いられます。
薬物療法では、脳の興奮を抑えたり、脳をリラックスさせたりする作用の薬を使用することがほとんどです。
一般的には「睡眠導入剤」と言ったります。
睡眠導入剤を使用すると、ほとんどの場合は寝ることができます。
しかし薬物の種類によっては「依存」等の副作用もあるので、長期間ダラダラと服用するのはあまりお勧めはできません。
薬物療法については、医師と相談しながら使用しましょう。
では鍼灸治療で不眠症は改善できるのでしょうか。
これに関しては、不眠症の種類によって効果が期待できる不眠症と、効果があまり期待できない不眠症があります。
あくまで私(当院)の経験に元ずく意見です。
まず効果が期待できる不眠症は以下の種類です。
ストレス等が原因で不眠になっている場合は、鍼灸治療で改善する場合がほとんどです。
まずストレスが多い人は、自律神経の交感神経が優位になっていることがほとんどです。
通常、昼間は交感神経が優位になっていて、夜になると副交感神経が優位になることにより体がリラックスして眠るのですが。
ストレスで交感神経が過度に優位になると、夜になっても交感神経が優位のままになってしまい体がリラックスしません。
この状態で眠ることは難しく、結果として不眠になってしまいます。
ですのでこの場合は、鍼灸治療で「自律神経のバランスを整えて」いきます。
要するに、鍼灸治療をすることにより交感神経の緊張を抑えて、副交感神経を優位にするのです。
副交感神経が優位になれば、体がリラックスするので結果として不眠も改善していきます。
腰痛、神経痛等、「痛み」がある場合は不眠になります。
痛みは「不快」な感覚で、脳がストレスを感じて興奮してしまいます。
興奮した脳の状態では、深く睡眠をとることが難しくなります。
鍼灸治療は、痛みをとることに長けた施術法です。
痛みの原因を見極めてしっかりと施術を行えば、ほとんどの人が痛みから開放されます。
痛みから開放されれば脳はリラックスするので、結果として不眠が解消されます。
では鍼灸治療しても、効果が期待できない不眠症はどのようなものがあるのでしょうか。
こちらも私(当院)の経験からくる意見です。
具体的には以下の不眠症です。
一番わかりやすいのは「うつ病」です。
うつ病になると必ずと言っていいほど「不眠」になります。
うつ病からの不眠は、ほとんどが重度でほぼ眠ることが出来なくなります。
この場合は薬物療法が基本になります。
鍼灸治療では、重度の不眠症を改善することは経験上難しいと思います。
ただあくまでも補助的な役割として鍼灸治療をしても良いとは思います。
要するに薬物療法をメインとして、鍼灸は補助として行います。
経験上、薬物単独で治療するよりも鍼灸を加えた方が相乗効果が期待できると思います。
では具体的に鍼灸治療ではどのように不眠症に対応しているのでしょうか。
鍼灸院によって施術法は様々ですが、あくまでも当院の鍼灸治療法を説明します。
まず当院では「自律神経のバランスを整える」「筋肉の緊張を緩める」ことを重要視して施術を行っています。
不眠症の方のほとんどが「交感神経が優位」になっているので、交感神経の興奮を抑えます。
具体的には、頭、手、足にある交感神経を下げるツボに鍼・灸を行います(ツボの位置は患者様個々で違います)。
また首、背中の筋肉の緊張を鍼で緩めます。
交感神経が緊張すると必ずと言っていいほど、首、背中の筋肉(脊柱起立筋)が過緊張を引き起こすからです。
ですので、首、背中の筋肉を鍼で緩めることによって交感神経の興奮を抑えます。
これが基本パターンになります。
それに加え、肉体的な痛みがある場合はそちらにも鍼でアプローチしていきます。
このような施術を行うことによって、個人差はありますが徐々に不眠が改善していきます。
不眠に悩む人は3人に1人、不眠症になる人は10人に1人と言われます。
不眠症は慢性化して悪化すると、生活の質の低下、仕事の効率の低下等、日常生活において多大な支障をきたします。
また、脳の機能が低下して「うつ病」等の精神疾患を発症するリスクが高くなることも知られています。
とにかく不眠症になってしまった場合は、早急に改善が必要です。
軽度の場合は、生活を改善するだけで症状が無くなることもありますが、重度になった場合は治療が必要となります。
睡眠は人間にとって重要な生理現象です。
現代人、特に日本人は睡眠時間が足りないという結果がでていますので、しっかりと睡眠時間は確保するようにしましょう。
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