一年ほど前から、様々な症状に悩まされるようになる。
症状は日によって違うが、基本的には、頭痛、肩こり、腰痛、背中の張り、手足の冷え、倦怠感、動悸、不安感等を発症する。
病院では様々な検査を受けたが、異常は無かった。
精神的な疾患と診断されて、今現在は心療内科に通院して薬物療法をしている。
半年程、薬物療法をしていると、精神的にはだいぶ楽になってきたが肉体面はあまり改善がみられない。
具体的には、頭痛、肩こり、腰痛、背中の張りが辛い状態である。
ネットで調べていると「鍼灸」が良いと思うようになった。
自宅で鍼灸院を探していると当院のホームページを見つけて、自分の症状のことも詳しく載せていたので興味を持ち来院された。
このような症状になってしまった原因を伺うと、ストレスが一番の原因のようだ。
当時、仕事が大変で特に人間関係が上手くいかず悩んでいた。
しばらくすると不眠になってしまい、そこから徐々に様々な症状を発症するようになった。
結局、仕事は退職することになりしばらくは無職で家にこもっていた。
心療内科で治療を開始すると、精神面での症状は良くなってきたので、今現在はパートで無理せず仕事をしている。
精神的な症状(不眠、不安感、動悸、倦怠感等)は楽になっているが、肩こり、腰痛、背中の張り、頭痛が一向に治らない。
特に仕事が終わった後に酷くなる。
触診すると、側頭部、首、肩、背中、腰の筋肉の過緊張が酷い状態である。
脈診すると「緊」「数」である。
症状は多岐にある。
病院で器質的な疾患は除外されている。
心療内科での薬物が著効している。
これらを総合すると、自律神経失調症と推察される。
仰臥位で、頭、手、足で自律神経のツボに鍼治療。
伏臥位で、首、肩、背中、腰、ふくらはぎの筋肉の緊張部に鍼治療。
温灸器を、背部にあてる。
前回の施術後、体が軽くなった。
施術は前回同様。
全体的に体が楽になった感じがある。
手足が温かくなった感じがある。
施術は前回同様。
肩、背中、腰は楽になっている。
施術は前回同様
施術の間隔を週に一回に変更する。
睡眠もかなり深くなった。
体はだいぶ楽になっている。
施術は前回同様。
全体的に体は楽になった。
首、背中、腰の張りもだいぶ楽である。
頭痛も発症していない。
今回の症例は、一般的に言う「自律神経失調症」だと思います。
自律神経失調症とは簡単に説明すると、何らかの原因で自律神経のバランスが崩れてしまい、様々な症状を発症する疾患です。
ここで言う何からの原因のほとんどは「ストレス」になります。
ストレスの無い人はいませんが、ストレスが多すぎて自分の許容量を超えてしまうと、自律神経はおかしくなってきます。
この疾患で悩まされている方は年々増えているようですが、実は自律神経失調症という病名は存在しません。
ですので今までは病院でこの病名を診断されることは無かったのですが、最近では医師によって「自律神経失調症」と患者さんに告げることも増えているようです。
ですがこの自律神経失調症の厄介な所は、検査をしても異常が発見されないことです。
なので患者さんはこんなに症状があって苦しんでいるのに、病院で検査をして「異常はありません」と言われてしまうと「そんなわけない」と落ち込んでしまいます。
そして最終的に「心療内科」での治療となるわけです。
心療内科では、薬物での治療が主になります。
一般的には、抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤、交感神経遮断薬等が処方されます。
俗に言う「向精神薬」という種類の薬物ですね。
この向精神薬ですが、まだまだ抵抗がある人がほとんどのようで、「絶対に飲みたくない」という人がほとんどだと思います。
この背景には、「依存」「副作用」「世間体」等が複雑に絡み合っていると思います。
まずネットで向精神薬を検索すると、ほとんどが「依存が高く止められなくなる」「廃人になってしまう」「副作用で苦しむ」みたいなサイトがほとんどです。
では実際に上記のような状態になってしまうのかと言えば、まずならないでしょう。
もちろん個人差があるので一概には言えませんが、医療機関で処方する薬は副作用が無いわけではありませんが、基本は安全です。
ただ向精神薬は患者さんの体質によって合う合わないがあるので、合わなかったら他の種類に変更してもらい、自分に合った薬を探すことです。
自分に合った薬が見つかれば、症状はとても楽になります。
では自律神経失調症に対して、鍼灸治療はどのような効果があるのでしょうか。
まず当院には自律神経失調で来院されている方はたくさんいらっしゃいます。
症状も多岐に渡るのですが、経験から言って「痛み」「こり」「張り」などの症状に関しては鍼灸治療の方が医療機関の治療よりも効果があると思います。
例えば、肩こり、腰痛、頭痛等は、数回の鍼灸治療でほとんどの方が改善に向かいます。
これに関して、当院では緊張して硬くなっている筋肉に直接鍼でアプローチするので、こり、痛み、張りをダイレクトに改善されることが出来るからです。
それとは逆に精神面での症状に関しては、医療機関での治療の方が効果的だと思います。
例えば、動悸、不安感、恐怖感、イライラ感等は、薬物治療で改善する場合が多いと思います。
向精神薬は脳に直接アプローチして、脳内の物質に作用するからです。
鍼灸に関しても、近年の研究で鍼灸をすると脳内で様々な作用が起きて、セロトニン等の物質が増えることが分かっていますが、薬物ほどの作用が期待できるかと言えば、そこまでの影響力は無いと思います。
ただ、鍼灸治療は体表から間接的に自律神経に作用して、バランスを整えること自体は可能です。
そのような経験から、私が自律神経失調症になってしまった方にお伝えするのは西洋医学、東洋医学両面で治療してくださいと言うことです。
西洋、東洋お互いの長所を取り入れて症状を改善するのが良いと思います。
実際に当院に来院されている自律神経失調症の方達のほとんどは、薬物療法をしながら鍼灸治療も受けており、症状がしっかりと改善することがほとんどです。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。