三か月程前から、左の腕が上がらなくなる。
角度で言うと120度位までは上がるが、それ以上は上げようとしても無理である。
病院でレントゲン、MRIを撮ったが骨、靭帯には異常が無かった。
診断名は一応「40肩」。
簡単な体操法を教わった。
元々、首肩こりは酷くて整体、鍼灸には通っていたが仕事で転勤したので最近は施術はご無沙汰だった。
ネットで家の近くを検索すると当院のホームページを見つけた。
中身を吟味して納得したので来院された。
左肩の痛みの性状を聞くと、最初は痛みがあったが今は痛みは無い。
ただ腕を上げたり反対に回すと可動域が狭く、無理に伸ばすと痛みがある。
夜は寝返りをすると痛くて目が覚めることがある。
四十肩、五十肩特有の「結滞動作、結髪動作」をしてもらうと明らかに右より可動域が狭い。
左肩周囲の筋肉を触診すると、硬さはある。
結滞、結髪動作が陽性であることや痛みの性状を吟味すると。
一般的に言う四十肩だと推察される。
伏臥位で、首、肩、肩甲骨周囲の筋肉に鍼治療を行う(鍼からは低周波のパルスを流す)。
左上の側臥位で、肩周囲の筋肉に鍼治療を行う(鍼からは低周波のパルスを流す)。
操体法で、肩関節の可動域を拡げるストレッチを行う。
あまり変化は無い。
施術は前回同様。
可動域が若干良くなる。
側臥位の施術で鍼を6センチから7.5cmの鍼に切り替える。
可動域は徐々に良くなっている。
施術は前回同様。
だいぶ楽になってきた。
施術は前回同様。
右とほぼ同じ可動域になった。
施術は前回同様。
今回の症例は一般的に言う40肩、50肩になります。
40肩(50肩)の正式名は「肩関節周囲炎」と言いますが、正式な病名は結構あやふやです。
何故かと言うと、どこまでの症状を発症したら40肩になるのか定義が薄いからです。
一般的には、腕が上がらなくなると40肩(50肩)なんて言われたりします。
病院でも肩のMRIを撮って関節や靭帯に損傷がなければ40肩と診断しているようです。
この40肩(50肩)に関しては、急性期、拘縮期、回復期の三段階に分かれます。
急性期は炎症が強いので、鎮痛剤の服用が有効です。
しかし拘縮期になると、肩周囲が固まってしまうので、固まった組織を緩めることが重要です。
鍼治療が有効なのは拘縮期だと思います。
当院では拘縮した組織を鍼でしっかりと緩めます。
しかし、同じ40肩(50肩)でも鍼治療が有効な場合と、無効な場合があります。
以下に説明してみましょう。
肩の関節周囲の筋肉が拘縮している場合です。
これは肩関節の周囲の筋肉が拘縮してる状態だと筋肉がそもそも伸びないので腕が上がりません。
この状態の場合、鍼でしっかりと筋肉の拘縮を緩めれば筋肉本来の柔軟性が復活するので、徐々に腕の可動域は広がっていきます。
尚、筋肉の拘縮のみの場合は腕の可動域はある程度あるので全く腕が上がらない状態ではありません。
関節の癒着がある場合です。
肩関節には「関節包」といって関節を包んでいる袋状の膜があるのですが。
この膜が様々な原因によって炎症を起こすと場合によっては関節に癒着してしまうことがあります。
この状態を「凍結肩」と言います。
この状態になると肩の関節はほとんど可動域を失ってしまうので、筋肉の拘縮だけが原因の場合と違って腕はほとんど上がりません。
鍼は筋肉にはアプローチできますが、流石に関節内部の関節包の癒着を治すことはできません。
また関節に石灰等のカルシウムが付着してしまった場合も同様です。
まあ、関節に問題がある場合だとMRIやエコー等で診断できるので、鍼治療が有効な40肩(50肩)は検査で異常が発見されない場合に限られます。
当院では筋肉にしっかりとアプローチするように比較的長めの鍼を使用して40肩(50肩)に対応していきます。
筋肉の拘縮が鍼で緩めば、数回の施術で腕の可動域が広がっていきます。
また40肩(50肩)に対しては操体法も重要です。
操体法は地味な作業ですが、毎日自分で行うことによって少しずつ肩の可動域を拡げていきます。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。