「天気痛」という言葉はほとんどの方が聞いたことがあると思います。
「天気痛」は「気象病」とも言われ、要するに「気圧」の急激な変動によって、心身に様々な不調をきたす反応のことです。
当院のような「鍼灸院」には、天気痛と思われる方が一定数来院されます。
つまり、鍼や灸の治療は「天気痛」の改善に非常に有効で相性が良いと思っています。
また鍼灸以外にも「漢方薬」等の東洋医学自体が「天気痛」「気象病」の改善に有効であると思います。
要するに「天気痛」「気象病」と東洋医学はとても相性が良いのです。
では気圧の急激な変動によって、身体にはどのような影響が起きて心身の不調が起きるのでしょうか。
まだ完全にはわかっていないようですが、有力な説としては。
低気圧等が近づくと、内耳(耳の中)にある気圧センサーが気圧の変化を察知します。
この状態になると自律神経の交感神経が活発に動くようになります。
要するに自律神経のバランスが崩れる訳です。
また様々な物質が放出されます、特に「ヒスタミン」という物質が増えることもわかっています。
身体全体では、急激な低気圧によって身体の内部は膨張します。
要するに「浮腫」が酷くなります。
わかりやすい例えとして、山に登ったときのポテトチップスの袋があります。
遠足なんかで高い山に登っていくと、持参したポテトチップスの袋がパンパンに膨らんでいることがあると思います。
この現象は高い山、要するに低気圧の場所に行くと、ポテトチップスの袋の内圧は高くなるので膨張して袋がパンパンになると言うわけです。
これを人間に当てはめると、急な低気圧で身体の内部が高くなって内部の組織、特に血管等が膨らむのです。
このように低気圧が近づくと、個人差はありますが上記のような反応が身体に起きるのです。
では具体的に天気痛を発症するとどのような症状に苦しむことになるのでしょうか。
代表的な症状を挙げてみます。
様々な症状を発症するようになります。
もちろん個人差がありますので、上記に挙げたすべての症状を発症するわけではありません。
最も多い症状としては「頭痛」があります。
頭痛のなかでも「片頭痛」に苦しむ場合が多いようです。
片頭痛は「血管の拡張」が原因のひとつとしてわかっていますが、先ほど説明したように低気圧が来ると血管が浮腫みます。
要するに血管が浮腫んで拡張してしまうので、血管の周りにある神経が敏感になって発痛物質を放出して片頭痛を発症します。
神経痛に関しては、低気圧が来ると交感神経が優位に働きます。
この状態になると痛みを感じる神経が敏感になるので、要するに「痛みを感じやすくなる」のです。
人間の身体は至ることろに神経があるので、敏感になった神経は少しのストレスが加わっても痛みを感じてしまうのです。
腰痛・肩こりに関しても、交感神経が関係します。
交感神経が優位になると、身体が過緊張状態になります。
この状態になると、筋肉が緊張を引き起こして硬くなってしまいます。
要するに筋肉自体が過緊張状態になって「こり」を発症するわけです。
先ほど腰痛・肩こりと言いましたが、筋肉がある部分はすべて緊張するので、腕であったり足であったり頭であったりする訳です。
緊張性頭痛等が良い例で、頭の筋肉が硬くなると締め付けられるような頭痛、要するに「緊張性頭痛」を発症します。
耳の症状に関しては、「耳鳴り」「耳がつまる」といった症状を訴える方が多いようです。
これらはいずれも耳鼻科で検査をしても異常は見つかりません。
要するに「自律神経失調症」の症状となります。
自律神経と耳は非常に繋がりが強く、自律神経のバランスが崩れると耳の症状を発症する確率が高くなるのです。
また首の筋肉が硬くなることによって、内耳の血流が悪くなるので余計に耳の症状を発症しやすくなります。
めまいに関しても、自律神経が深く関係します。
めまいの原因は様々ですが、なかでも自律神経が関係するめまいは多いようです。
交感神経が優位になると、耳への血流が悪くなります。
この状態が続くと、内耳にある「蝸牛」内のリンパ液が増えすぎてしまいます。
この状態になると「めまい」「低音の耳鳴り」「低音が聞こえない」といった症状に苦しむことになります。
疲労感に関しては、やはり自律神経が関係します。
要するに「自律神経失調症」になる訳です。
交感神経の過緊張が続くと、常に興奮状態が続きます。
この状態になると、睡眠も浅くなるので疲れが抜けません。
当然、身体が怠くなったり、何もする気が起きなくなります。
更に悪化すると、脳への血流が悪化して機能障害が起きやすくなります。
この状態になると「うつ症状」を発症して、更に悪化すると「うつ病」を発症することになります。
天気痛の特徴は、「病院で検査を受けても異常は発見されない」ということです。
なので今のところ、天気痛に対しての直接的な治療法はありません。
要するに「対処療法」が主になります。
例えば頭痛がするようであれば鎮痛剤、めまいがあれば抗めまい薬、うつ症状が悪化すると「抗うつ薬」といった感じです。
まあ、短期の症状であれば対処療法でも良いと思いますが、長期になってくると副作用も含めて薬物療法だけでは難しくなってきます。
実際に当院に来院される天気痛の方のほとんどは、薬物治療だけでは限界を感じている場合がほとんどのようです。
そこで西洋医学のみではなく、東洋医学の登場となるわけです。
特に「漢方薬」がこの天気痛に対して効果的であるという論文も発表されています。
漢方薬は自然界に存在する薬効成分(生薬)を二つ以上組み合わせて作られているものです。
症状、体質によって様々な生薬を内服することによって効果を発揮します。
天気痛(気象病)に関しては、個人差はもちろんありますが、漢方薬を服用することによって症状が改善されます。
最近では天気痛に対しての市販薬が販売されていますが、漢方薬が入っている場合が多いようです。
ただし漢方薬の難しいところは、症状が同じでも体質が違う場合は違う種類の漢方薬が有効になる場合がほとんどです。
ですので漢方薬を飲む場合は、漢方薬に詳しい医師、または漢方専門薬局等で漢方を処方、購入した方が良いと言えます。
では鍼灸治療は天気痛に効果があるのでしょうか。
答えは「もちろんあります」。
まず鍼灸治療の特徴として「自律神経のバランスを整える」という特性があります。
これは人体に鍼や灸をすると「体性=自律神経反射」を介して自律神経のバランスを整えようとするからです。
先ほど説明したように、天気痛・気象病は自律神経のバランスが崩れることによって様々な症状が発症する疾患です。
ですので鍼灸治療をすることにより自律神経のバランスが整うと症状が改善されるわけです。
ただし鍼灸院によって施術の方法が様々ということ、同じ天気痛でも症状に個人差があることからバラツキはあると思います。
因みに当院では。
この二点に重きを置い施術を行っています。
まず自律神経に関しては、東洋医学的な解釈を重視しつつ、交感神経の緊張時に現れる筋肉に施術を行っていきます。
また対処療法では、例えば頭痛がある場合は頭痛の施術、腰痛がある場合は腰痛の施術を行います。
これらを数回行っていくと、ほとんどの方が症状が改善していきます。
尚、天気痛、気象病を発症しやすいタイプの方は、元々自律神経のバランスを崩しやすく、ストレスにも敏感な場合が多いです。
痛みも感じやすいので、肩こり・腰痛等も発症しやすいと言えます。
ですのでこのタイプの方は、定期的な施術をお勧めしています。
漢方、鍼灸等の東洋医学は、元来「予防医学」といわれ、症状が酷くなる前に施術を受けた方がより効果的で、患者さん自身も苦痛が少なくて済みます。
天気痛、気象病で苦しまれている方は、漢方・鍼灸等の東洋医学を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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