朝、家から出掛けるときに靴を履こうとしたら、右の腰に激痛が走る。
痛みは激痛で、そのまま動けなくなった。
しばらく家で様子をみていたが、痛みは一向に改善しなかったので病院に行った。
レントゲンでは骨には異常が無く、痛み止めを処方された。
その日は、仕事を休んで家で安静にしていた。
翌日になっても痛みはあまり変化せず、腰を動かすと激痛が走る。
数年前に同じように腰を痛めたときに当院の鍼治療で痛みが楽になったのを思い出して当院に連絡、来院された。
腰を曲げていると痛みは多少楽。
伸ばそうとすると激痛が走る。
足へのしびれは無。
睡眠中も「ズキズキ」と疼いていた。
右の腰を触診すると、筋肉が腫れていて熱を持っている状態。
痛みの性状は、急性痛。
睡眠中(安静時)の疼きがある。
これらを総合するとぎっくり腰(急性腰痛)だと推察される。
右上の側臥位で、腰の筋肉に鍼をする。
鍼からは微弱電流を流す。
抜針後、皮膚から更に微弱電流を流す。
痛みはだいぶ楽になった(痛み指数10→5)。
施術は前回同様。
痛みはかなり楽(痛み指数5→2)。
施術は前回同様。
痛みは無くなった。
施術は前回同様。
今回の症例は、一般的に言う「ぎっくり腰」です。
正式には「急性腰痛」「腰痛捻挫」等と言ったりします。
また業界用語では「魔女の一撃」とも言ったりします。
ぎっくり腰は、何かの拍子で腰に激痛が走り、重度だと動くことが出来なくなります。
この疾患ですが、イメージとしては重い物を持った瞬間に「ギクッ」となって発症すると思われるかと思います。
しかし実際には、重い物を持ってぎっくり腰になる人はほとんどいません。
何故かと言うと、通常重い物を持つときは「持つぞ」と体が身構えるからです。
身構えるので、よほどのことが無い限り痛めることは無いんですね。
ではどのような状態で痛めてしまうのかと言いますと。
「身構えていない状態」の時です。
例えば「靴の紐を結ぶとき」「満員電車で座っていて立ち上がるとき」「車から降りるとき」等。
何気ない動作で「ギクッ」とやってしまうのです。
ただしぎっくり腰を発症した場合、発症する前から疲れが溜まっていたり、腰が硬かったりと何かしらの原因がある場合がほとんどです。
この状態を放置していると、何気ない動作であっさりとぎっくり腰になるのです。
このぎっくり腰ですが、同じぎっくり腰でも個人差がかなりあります。
軽度であれば痛み自体もさほど酷くなく、痛いながらも何とか動くことができます。
しかし重度になると、痛みでほとんど動くことが出来ません。
例えばトイレに座るのに10分かかる場合もあります。
ではぎっくり腰とは解剖学的に説明すると、どのような状態なのでしょうか。
簡単に言えば「炎症を起こしている」状態です。
要するに患部に熱を持って腫れているわけです。
一般的な腰痛等のように「筋肉が硬くなっている」とは違います。
もちろん筋肉は硬くなるのですが、それに加えて炎症がある状態です。
これは腰を痛めたときに、筋肉や関節の組織が痛んでしまい、その代償として炎症(刺激)物質が発症してしまうからです。
因みに炎症物質は「ブラジキニン」「プロスタグランジン」等、様々なものがあります。
これらの物質が作られると神経作用として「激痛」を発症します。
ですのでぎっくり腰を治そうと思ったら、まず筋肉を緩めるのではなく炎症を抑えることが第一条件になります。
因みに当院では痛みの程度にもよりますが、激痛がある場合に関しては炎症を抑える施術を行います。
まず鍼治療は、炎症を抑える作用もあるのですが、逆に血行をよくしてしまい炎症を拡げる可能性もあります。
ですので急性疾患の場合は、あまり刺激の強い鍼はしないようにしています。
刺激が強いと炎症を拡げてしまい痛みを悪化させる可能性があるからです。
まあ、ここは個人差や炎症の度合いで違ってくるのですが。
また当院では「微弱電流」を流すようにしています。
微弱電流は低周波とは違い、筋肉を動かさないので炎症を拡げることはありません。
また微弱な電流(マイクロカレント)は性質上、炎症性物質にダイレクトに働いて、炎症を抑える作用があります。
ですので当院では、鍼から直接微弱電流を流したり、皮膚からも微弱電流を流すことによって、炎症を抑えることを重視しています。
炎症を抑えれば激痛は無くなるので、あとは筋肉を緩めれば改善します。
因みに、ぎっくり腰を発症した場合、患部を温めるのか冷やすのか、どちらかといった質問をよくされます。
目安としては安静時(楽な姿勢)に患部がズキズキと疼くかで判断してください。
安静時にズキズキと疼くようであれば炎症が酷いので冷やしましょう。
疼きがないのであれば、炎症はあまり無いと思われるので温めてよいと思います。
だたし、痛めた直後は炎症が無くても徐々に炎症が広がる可能性もあるので、痛めた日は温めない方が無難です。
その日はお風呂は止めて、シャワーだけにしましょう。
ぎっくり腰に関しては、要は「捻挫」と同じです。
組織(主に筋肉、靭帯)の一部が損傷をしてしまい、損傷が酷いと炎症(熱)が発症して激痛を引き起こします。
症状が酷い場合は、患部を冷やして安静にしましょう。
市販の「鎮痛剤」も効果があります。
薬に抵抗がなければ服用してください。
鍼治療もぎっくり腰には高い効果が認められています。
できれば日を空けずに、毎日施術するのが望ましいです。
急性疾患の場合は、慢性疾患と違い、比較的短期で症状の改善が見込めます。
ぎっくり腰で辛い方は、是非当院の鍼治療をお勧めします。
疾患症例集について・・・
臨床経験のなかで、特に印象が強かった症例をできる限り分かりやすく掲載しています。
これをご覧になって、ご自分の症状と似ている部分があれば施術方針の参考にしてください。
尚、ご自身の抱えている症状が当院の施術で改善するのか、詳しく知りたい場合は遠慮なくご相談ください。