「COPD」と言う言葉は聞いたことがあるでしょうか。
COPDとは「慢性閉塞性肺疾患(Cronic Obstructive Pulmonary Desease)」の略です。
慢性閉塞性肺疾患とは、慢性気管支炎や肺気腫等の病気の総称を言います。
気管支が炎症を起こしたり、肺の細胞が破壊されて肺の機能が低下して悪化すると、咳、痰、息切れが激しくなり生活に多大な支障をきたします。
またCOPDは気管支喘息とは違い、進行性の疾患になります。
このCOPDですが、男性の死亡原因の第八位となっていて、日本国内での患者数は約530万人いるとされています。
年々死亡者数は増えているようですが、あまり知られていない疾患であることから、ちゃんと治療を受けている人は二十二万人程のようです。
最大の原因は「喫煙」です。
タバコの煙は化学物質で有害性を含んでいます。
長期間タバコを吸い続けることによって、気管支の組織が炎症を起こします。
気管支が炎症を起こすと気管支の壁が厚くなり、気管支が狭くなってしまいます。
気管支が狭くなることで痰が溜まってしまい、空気が通りにくくなります。
更に肺にまで影響が及ぶと、肺の組織(肺胞)が破壊されてしまい、酸素をうまく取り込めなくなってしまいます。
尚、喫煙以外の原因には、粉じん、大気汚染、乳児の呼吸器感染、遺伝、受動喫煙等があります。
歩行、階段の昇降等、体を動かした時に「息切れ」が著明になります。
また「咳」「痰」が続きます。
最終的には「呼吸困難」が頻繁に起きるようになります。
身体的な状態としては、呼気が長い、胸鎖乳突筋が肥大する、胸郭の前後幅が拡大する、呼気時に肋骨が陥没する等が現れます。
いずれにしろ、この疾患を患うと「呼吸」に障害がでます。
治療の基本は「禁煙」です。
禁煙することにより症状の進行を遅らせたり、合併症を予防します。
その他には、薬物療法、運動療法があります。
薬物療法では、気管支拡張剤、抗炎症剤、去痰剤等を使用することが多いようです。
運動療法は呼吸筋等の筋肉を鍛えることにより、免疫機能の向上、気力、食欲の向上を目的とするようです。
ではCOPDに対して、鍼灸治療は効果が期待できるのでしょうか。
これに関しては、各大学病院、全日本鍼灸学会等で検証を重ねたところ「有効である」と結果がでています。
ただ間違えてほしくないのは、鍼灸治療はあくまでも「補助的」な施術になります。
つまり鍼灸治療でCOPD自体が直接改善するわけではありません。
ではどの部分で鍼灸がお役にたてるのでしょうか。
基本的には以下の効能が期待できます。
「呼吸筋」とは呼吸をするときに活躍する筋肉のことです。
通常、呼吸は肺が膨らんだり縮んだりしますが、肺自体が動いているのではなく肺周囲の筋肉が肺を動かしています。
その筋肉群を呼吸筋と言います。
では呼吸筋とは、具体的にどの筋肉を指すのでしょうか。
主に「肋間筋」「横隔膜」になります。
肋間筋とは、肋骨の間にある筋肉で、横隔膜は背中にある筋肉です。
COPDの人は呼吸を過度に行うので、呼吸筋が過度に動いてしまい結果として肋間筋、横隔膜が疲弊してしまいます。
また呼吸筋が疲弊してしまうと、他の筋肉にも影響が及びます。
主には胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋等です。
鍼灸治療(当院)では、これらの筋肉に直接アプローチして筋肉の緊張を緩めて疲れを改善していきます。
筋肉が緩んでいけば、呼吸が楽になります。
呼吸と自律神経は深い関わりがあります。
通常、息を吸うときは「交感神経」が、息を吐くときは「副交感神経」が働きます。
COPDになると、呼吸が乱れますが同時に自律神経のバランスも乱れて脳内にある「帯状回」「偏桃体」という器官が亢進してしまうとされています。
ですが鍼治療時の脳内を、F-MRIで調べた研究があり、その結果として帯状回、偏桃体の制御が確認できました。
つまり鍼をすることによって亢進している脳内の器官を抑制することができ、結果として呼吸困難が改善されるという仕組みです。
鍼灸治療の効能のひとつに、脳内に「モルヒネ様物質」を放出させることで強い鎮痛効果を得られることがわかっています。
そして呼吸困難という症状に対して、モルヒネの効果が有効と示されています。
ですので鍼灸治療をすることにより、脳内にモルヒネ用物質を作ることで呼吸困難が改善されると言われています。
因みに当院ではCOPDに対してどのような施術をしているのか、簡単に説明してみます。
まず上記で説明した「呼吸筋」を鍼でしっかりと緩めます。
肋間筋、横隔膜を基本として、胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋等も鍼を使って緩めます。
鍼は筋層までしっかりとアプローチします。
呼吸筋や付随する筋肉を鍼でしっかりと緩ませれば呼吸がとても楽になります。
頭、手、足、背部にある自律神経のツボに鍼灸をしていきます。
自律神経のバランスを整えることにより、脳内にある「帯状回」「偏桃体」の亢進を抑えることができれば、呼吸が楽になります。
また鍼灸をすることによって、脳内から「βエンドルフィン」というモルヒネ様物質が放出されることがわかっています。
βエンドルフィンはモルヒネの数倍の鎮痛効果があって、呼吸器にも作用します。
要するにβエンドルフィンがたくさん放出されれば、呼吸がとても楽になるということです。
このように当院では、呼吸に関係する筋肉を鍼でしっかりと緩ませる、自律神経を介して脳内の物質に作用する。
これらを行うことにより、呼吸を楽にしていきます。
当院ではCOPDで苦しんでいる方達を鍼灸治療で改善しています。
もちろん個人差があるので、すべての人に有効というわけではありません。
重度の場合は、鍼灸をしても楽にならない方もいます。
しかし鍼灸治療は薬物のような「副作用」がないので、試してみる価値はあると思っています。
COPDの治療は医療機関が主で、鍼灸治療は補助的な役割です。
主軸は病院での治療を最優先として、補助的に鍼灸を受けるのがベストだと思います。
鍼灸を受けることによって、少しでも呼吸が楽になるのであれば幸いです。
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